幸せな毎日を送るために(令和3年6月)

 中国に「飲水思源(いんすいしげん)」ということわざがあります。これは「水を飲(の)む時は、その水(すい)源(げん)のこと、また井戸を掘(ほ)った人のことを思う」ということから、物事の基本を忘れないこと、そして他人から受けた恩を忘れてはいけないということを意味しています。
 私たちが毎日生活を送るためには、お父さんやお母さんをはじめ、様々な人によって支えられ、守られ、助けられています。ですから、多くの人たちのお陰(かげ)で今の自分があることを当たり前と思わず、感謝していかければなりません。
 この「お陰」とは、「おかげさま(御陰様(おかげさま))」のことで、もともとは神さま仏さまの助けや御加護(ごかご)を意味します。そこから、人から受けた支え、お力添(ちからぞ)えなどのことを指すようになりました。私たちは、ふだん当たり前に感じていることが、実は当たり前ではないことを知って、常に感謝(かんしや)の心を持って生活していきたいものです。
 さて、法華経(ほけきよう)には諸天善神(しよてんぜんじん)による守護(しゆご)が説かれています。諸天善神とは、法華経において、末法(まつぽう)の法華経の行者を守護することを誓(ちか)った神々(かみがみ)のことで、諸天善神は昼夜(ちゆうや)を分かたず、正しい仏法を行ずる者を守護するということです。
 日蓮大聖人さまは、『船守弥三郎殿許御書(ふなもりやさぶろうもとごしよ)』に、「法華経を行ぜん者をば、諸天善神等、或(あるい)はをとことなり、或は女となり、形をかへ、さまざまに供養してたすくべし」と仰せられ、大聖人さまの説かれた教えを正しく信仰するならば、諸天善神が色々な姿(すがた)・形となって、私たちを守って下さることを教えられています。
 また大聖人さまは、『乙御前御消息(おとごぜんごしようそく)』に、「妙楽大師(みようらくだいし)のたまはく『必ず心の固きに仮(か)りて神の守り則(すなわ)ち強し』等云云。人の心かたければ、神のまぼり必ずつよしとこそ候(そうら)へ」と仰せられ、私たちの信心が強ければ強いほど、諸天善神の守護が強くなることを言われています。
 さらに、大聖人さまは『日女御前御返事(にちによごぜんごへんじ)』に、「仏・菩薩・大聖(だいしよう)等、総じて序品(じよほん)列座の二界・八番の雑衆等、一人ももれず此の御本尊の中に住(じゆう)し給(たま)ひ、妙法五字の光(こう)明(みよう)にてらされて本有(ほんぬ)の尊形(そんぎよう)となる。是(これ)を本尊とは申すなり」と仰せられ、「あらゆる仏さま、諸天善神等は、一人ももれなく御本尊さまの中に住(じゆう)しており、妙法蓮華経に照(て)らされて本来の尊い姿になる」ということです。つまり、諸天善神の御加護はすべて御本尊さまのお力であり、御本尊さまを正しく信じ、お経やお題目を唱えることによって、初めて私たちを守って下さるのです。
 ですから、皆さんの住んでいる家の近くに神社などがあるかもしれませんが、特に八幡大菩薩(はちまんだいぼさつ)や天照太神(てんしようだいじん)などを祀(まつ)っている神社が多いと思います。しかし、神社にお詣(まい)りしても、そうした方々は私たちを守っては頂けませんし、そもそも神社に神さまはいません。私たちを守って下さる神々は、すべて御本尊さまの中に住していますから、神社にいないのも当然です。逆に、今神社には神さまがいない代わりに、悪い鬼や魔神(まじん)が住んでいますので、なるべく神社には近づかないようにして、神社の中には入らないようにしましょう。
 ところで、皆さんは「御本尊さまに守って頂いた」と感じた経験はありますか?また、何か願い事や悩み事、成功させたいこと、適(かな)えたい願いごとがあった時、御本尊さまに御祈念(ごきねん)してお願いをした子もいると思います。これは非常に大切なことです。せっかく私たちは信仰しているのですから、そうした願い事がある時は御本尊さまや諸天善神の御加護を頂くためにも、進んで御本尊さまに一生懸命お題目唱えていくよう心掛け、これからも幸せで有意義な毎日の生活を送れるようにしましょう。
 もう一つ大切なことは、御本尊さまに願い事をして、それが適った時、また私たちは知らず知らずのうちに、御本尊さまや諸天善神に守られていることもあります。しかし、ただ守って頂くことばかりではいけません。御本尊さまにへの感謝の気持ちを持つとともに、「御本尊さまをお守りしなければ」、「私たちのお寺をお守りしなければ」という心を持つことも大切なことです。
 これから皆さんは、中学生、高校生となり、その後大学や専門学校に入学したり、就職する子もいると思います。そしていま、世の中はコロナ禍で多くの方が大変な生活を送っています。皆さんも、学校生活のなかで、友人関係などの悩み事や、なかなか上手(うま)くいかないこと、中学受験や高校受験、大学受験、日頃の試験勉強も大変だと思います。また、「御本尊さまに守られた幸せな毎日を送りたい」と、一生懸命信心に励んでいくと、それを邪魔しようとする様々な用(はたら)きが生じてきます。それを「三障四魔(さんしようしま)」といいます。しかし、強い信心をもって立ち向かっていけば、必ずそうした用きを払(はら)い除(の)け、より一層笑顔(えがお)あふれる幸せで楽しい毎日を送ることができるようになります。
 どうか、皆さんには御本尊さまをはじめ、お世話になり支えてもらうすべての人に、感謝の気持ちを持って、今度は自分自身が誰かの役に立てるよう、何か困ったり悩んでいる人の助けや支えになれるよう、日頃の勉強と共に、勤行や唱題も一生懸命行って下さい。