親孝行とは(令和3年3月)

 「孝行(こうこう)」とは、親を大切にし、真心(まごころ)をこめて親に尽(つ)くすことをいいます。日蓮大聖人さまが仰(おお)せになられている「孝養(こうよう)」という言葉は、「孝行」と同じ意味(いみ)になります。また、私たちは、ひとりで生きていくことはできません。毎日、たくさんの人のお世話(せわ)になって生活をしています。そこで大切なことは、恩(おん)を受(う)けていることを知って、その恩に報(むく)いていくということです。これを「知恩報恩(ちおんほうおん)」と言います。
 仏教では、私たちが受ける恩を四つにまとめた「四恩(しおん)」が説(と)かれています。大聖人様は、「一つに父母(ふぼ)の恩を報じなさい。二つには国主(こくしゆ)(社会全体(しやかいぜんたい))の恩を報じなさい。三つには一切衆生(いつさいしゆじよう)(すべての人々)の恩を報じなさい。四つには三宝(さんぼう)(仏(ぶつ)・法(ぽう)・僧(そう))の恩を報じなさい(取意(しゆい))」と仰せられ、また、「仏弟子(ぶつでし)は必ず四恩をしって知恩報恩をいたすべし」と仰せになられているように、日蓮正宗の信徒である私たちは、四恩に対して報恩感謝(ほうおんかんしや)することがとても大切であるということです。
 私たちにとって、お父さんお母さんはとても身近(みぢか)な存在であり、両親が色々とお世話をしてくれることが、だんだん当たり前のように思ってしまい、ついつい感謝の気持ちを忘れてしまいがちになってしまいます。そこで、あらためて父母の恩を考えてみましょう。
 まず、皆さんは、お父さんやお母さんが仕事をして、家事をして、生活を支えてくれるおかげで、毎日ご飯を食べることができ、学校へ行くことができます。また、生まれてから今日(こんにち)まで、皆さんの健康(けんこう)と無事(ぶじ)をいつも願い、立派な大人になれるよう祈(いの)ってくれているでしょう。ですから、私たちは大聖人さまのお言葉通りに、父母の恩を忘れることなく、両親への感謝の気持ちをもって親孝行していくことが大事なのです。そして、親孝行の方法はいくつもあります。例えば、仕事で疲れたお父さんの肩をもんであげたり、お母さんの家事を手伝って、お風呂の掃除をしたり、お料理を手伝ったりしてあげること。また、勉強やクラブ活動を頑張ることも親孝行といえますから、皆さんが一生けんめいがんばる姿を見せて、ご両親を安心させることも親孝行になります。
 では、もしもお父さんやお母さんが亡(な)くなってしまったら、もう親孝行はできないと思いますか?大聖人さまは、「父母に孝養したいという心があるのならば、南無妙法蓮華経と唱えて、その功徳を贈(おく)りなさい」と仰せになられています。
 つまり、毎日の勤行でしっかりとご回向(えこう)していくことが、亡くなった親への孝行になります。そして、命日(めいにち)(亡くなった日)などの時には、お寺でお塔婆供養(とうばくよう)を願い出て、住職さんと一緒にお経を読み、お題目を唱えることが親孝行の姿になります。
 日蓮正宗では、毎日朝夕の勤行において、五座で先祖供養をします。先祖とは、すでに亡くなった祖父母(そふぼ)(おじいさん、おばあさん)、曾祖父母(そうそふぼ)(ひいおじいさん、ひいおばあさん)をはじめとする、自分と血のつながりのある人たちのことです。
 皆さんには、お父さんとお母さんがいて、その両親(りようしん)にもそれぞれ、お父さんとお母さん(おじいさん、おばあさん)がいます。これで、両親2人と祖父母4人を合わせると6人になります。さらに、祖父母にもお父さんお母さんがいると、その4人を合わせて、曾祖父母までで、先祖がすでに10人になります。このように考えていくと、皆さんには、とても多くの先祖がいることがわかります。また、その方々のおかげで、皆さんが生まれてくることができたのですから、ご先祖さまへの恩はたいへん大きいのです。そして、恩ある人たちには、必ず恩返しをすることが大聖人さまの教えです。その方法こそが、追善供養(ついぜんくよう)、お塔婆供養(とうばくよう)ということなのです。
 皆さんも、お父さんやお母さんがお塔婆を建てた時、本堂の右側で一緒にお焼香(しようこう)をする時があると思います。それは、皆さんのおじいさんやおばあさんをはじめ、家で飼(か)っていた犬や猫、鳥など、亡くなった人やペットにいたるまで、追善供養のためにお塔婆を建てて供養するためにしています。追善供養とは、御本尊様をお徳を送り届けることであり、お塔婆をお願いしてお塔婆に亡くなった先祖やペットなどの名前を住職さんに書いてもらい、そして住職さんと一緒に御本尊さまにお経やお題目を唱え、その功徳をお塔婆を通じて送り届けることにより、皆さんが毎日勤行や唱題をするように、亡くなった方々は功徳を積めることができるのです。
 それでは、なぜそうした追善供養をしなければならないのでしょうか。それは、ペットであったら当然ですが、人間でも亡くなったあとは、自分で信心修行をして功徳を積むことができなくなってしまいます。ですから、亡くなった方々は、皆さんがお経やお題目を唱えて追善供養してくれるのを、いつも心待ちにしています。ましてや、お塔婆を建てて追善供養することは、とても大きな功徳を届けることになります。ですから、今を生きる私たちが大聖人さまの信心をしっかり行い、御本尊さまにお題目を唱えることによって功徳を積みかさね、その功徳を亡くなった方々へ送ること(回向(えこう))がとても大切になってきます。
 今月は、お寺で春季彼岸会(しゆんきひがんえ)が行われます。ぜひ家族そろってお寺に参詣(さんけい)し、お父さんやお母さんがお塔婆を願われると思いますし、住職さんは妙眞寺に縁するすべての方々のために、大きな塔婆を塔婆台の正面に建てています。ですので、彼岸会に参詣してお経やお題目を唱えて、お焼香をして先祖供養をしっかり行って下さい。特に、亡くなったご先祖さまは、皆さんがそうして先祖供養をして孝行する姿をとても喜んで下さると思います。
 そして最後にもう一つ、それは皆さんが毎日一生けんめい勤行や唱題を行い、立派な大人へと成長することが一番の親孝行であり、また、その姿を御本尊さまも必ず見ています。どうか、このことを忘れず新年度を迎えて下さい。

住職より

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