身を焼いた兎(平成27年11月)

むかし、インドの国でお釈迦様が500人の弟子を引きつれて、法を説きながら全国各地を回っていました。

ある日、長者の作った大きな宿で、食事の御供養を受けていました。

食事のもてなしを受けたお釈迦様は、お礼を言ったあと、次のような話をされました。

「ウパーサカよ、喜びなさい。このように、たくさんの僧侶たちに食べ物を差し上げ御供養する志は、実にすばらしいことです。
なぜなら、あなたはたくさんの人々を救う僧侶を養っているからです。
多くの人々を幸せに導く正しい法を説く僧侶に御供養をすることは、多くの人々を救うことと同じことです」。

 

そして、お釈迦様は、我が身を犠牲にして、飢えた僧侶に御供養(ごくよう)しようとした「兎」の話をはじめました。

 

【むかし、ある菩薩が兎に生まれ変わって、森の中に住んでいました。
兎はいつもまわりに気をくばり、大変かしこく、仏教の信仰心のあつい兎でした。

兎には、猿と犬とカワウソの3匹の友だちがいました。

兎は、「困っている人がいたら、救いの手をさしのべ、正しい教えを守り、正しい修行をしなければならない」と、3匹の友だちに教えていました。

ほかの3匹の友だちは、いつも兎の良い話を聞き、心が安らかになって、自分の住んでいる場所へと帰っていきました。

ある日兎は、何日も食事をとれず、飢えた僧侶が次の日この森に来ることを知り、ほかの3匹にも次のように言いました。

「明日は、長いこと食事をとっていない僧侶が、この森に来られます。私たちは何か食べ物を差し出し御供養(ごくよう)すれば、命が清らかになり立派な徳を積むことができます。みんなで食べ物を集めて御供養しましょう」と言いました。

 

兎の話をきいたカワウソは川で魚をとり、犬は肉とトカゲとチーズを集め、猿は森の中でマンゴーを取り、それぞれ持ちかえりました。

兎もえさ場に行って、枯れたほし草を集めましたが、ほとほと困ってしまいました。

「自分がいつも食べるほし草では、僧侶には食べていただくことができない。どうしようか」と、長いこと悩んでいました。

そして兎はある決心をして、そのほし草をお腹いっぱい食べて、森に帰って眠りました。

 

次の日、年老いた僧侶が森にやってきました。

するとまずカワウソが、「御僧侶さま、どうかこの7匹の魚を召し上がってください」と魚をさしだしました。

次に犬は、「このお肉と、トカゲとチーズです。悪くなりやすいので、すぐにお食べください」と言いました。

猿は「デザートにこのマンゴーを食べてください」と言いました。

そして、兎はというと体がブルブルふるえています。その前には赤々と火がたかれていました。

すると兎は、「御僧侶さま、わたしがふだん食べているほし草を食べて頂くわけにはいきません。どうか、焼けたわたしの身を食べて下さい」と言って、火の中に飛びこみました。

しかし、どうしたことでしょう。火は少しも熱くありません。
まるで雪のなかにとびこんだようで、灰が粉雪のように舞っています。

 

兎の尊い御供養の志に感動した僧侶が、神通力で火を消し、灰を雪のようにしたのでした。

そして、その僧侶は兎の志を永遠に残すために、月に兎の絵を描いたのでした。】

 

 

こんな話をされたあとに、お釈迦様は
「その時のカワウソは今の阿難(あなん)です。犬は目連(もくれん)、猿は舎利弗(しゃりほつ)、そして兎はわたしだったのです」と言いました。

阿難も目連も舎利弗も、今はお釈迦様の十大弟子として、常にお釈迦様のお供をし、お説法を聞いて、正しい教えを学んでいます。

そして、お釈迦様の前世において、こうしたことがあったということを、お釈迦様から聞くことができました。

 

皆さんは、月には兎が住んでいておもちをついているとか、月に兎の体が写っているという話を聞いたことがありますか?月と兎の話はこのような仏教の話からきているのでしょう。

 

さて、このお話には御供養のこと、正しい修行をすること、そして自分を犠牲にしてでも人のために尽くすという意味があります。

とくに皆さんは、朝晩の勤行と唱題をしっかり行うこと。まわりに何か困っている人がいたら、心配し相談にのったり助けてあげること。

なによりも、一緒に南無妙法蓮華経を唱えていこうよ、と大聖人様のお話をしてあげることが大切です。

周りの友だちが本当に幸せになるためにも、悩み困っている子がいたら特に一生懸命さそってあげて、一緒にお寺に行って南無妙法蓮華経のお題目を唱えてみようよと、言ってみましょう。

 

日蓮大聖人さまの御本尊様は、世の中のすべての人を幸せにすることができ、色々と悩み困り苦しんでいる人がいたら、それを解決することのできる、すばらしい力がそなわっています。

ぜひ、このことをいろんな人に伝え、御本尊様にしっかり御供養できる立派な大人になれるよう、がんばっていきましょう。