コロナ禍での信心⑦
新型コロナウイルス感染拡大も勢いを衰えることなく、医療崩壊を招き、各病院の病床を圧迫し、残念ながらも大事に至り命を落とされる方が日に日に増している毎日が続いております。
とにかく今は、御本尊様を固く信じ、この疫病の災禍たる邪宗謗法の害毒と、元品の無明、即ち自身の三毒煩悩によって我を失うこと無く、ただただ御本尊様にお題目を唱え、この災禍に打ち勝つ信心を続けて頂きたく願います。大聖人様は『御義口伝』に、「一念三千も信の一字より起こり、三世諸仏の成道も信の一字より起こるなり。此の信の字は元品の無明を切る所の利剣なり。其の故は、信は無疑曰信とて疑惑を断破する利剣なり」と仰せであります。
要するに、この信心は御本尊様への確信が第一歩であり、その信心のもとでありとあらゆる信行の実践に励み、功徳利益を積み累ねて行くことが、幸福なる境涯を築く礎となっていきます。ましてや、世の中の多くの人々が不幸を招き、明日への道を彷徨う根本である無明煩悩を断ちきる利剣こそが、この妙法の教えにあることを確信し、それこそ自らの幸福を望むならば、縁ある方々の幸福を願い祈り、この妙法の教えを説き弘めて行くことが肝要であります。
何事も因果応報であることは言うまでも無く、自らの幸不幸も、どんなに些細なことも、自身の受ける果報は自分自身に原因があることを悟り、大聖人様が『十字御書』に、「法華経を信ずる人はさいわいを万里の外よりあつむべし。影は体より生ずるもの、法華経をかたきとする人の国は、体にかげのそうがごとくわざわい来たるべし」と仰せのように、邪宗謗法の害毒によって大きな災いを招いているなかで、私たちは幸いを万里の外より、より多く集めることができるような境界になって頂きたいものであります。
話は変わりますが、今から30年ほど前、私が東京都渋谷区にある日蓮正宗の大学機関である富士学林大学科に通っている頃、東京都足立区の本修寺に在勤しておりました。その当時あった一つの出来事を、最近おぼろげながら思い出しました。
それは、「本修寺支部の折伏推進部長をされていた上田さんの御家族が営む、埼玉県八潮市の中華料理店に、1人の壮年の男性が通われていました。表情も暗く何か大きな悩み事を抱えているようであり、ある時上田さんがその方に声をかけました。話を聞いてみると、仕事上の問題を抱え、奥様やお子様と離ればなれで暮らすくとを余儀なくされており、その御家族は九州で暮らしているようでありました。そして御自身は八潮市で一人暮らしをしており、大変な思いをされていたようであります。そこで、上田さんは早速、大聖人様の信心の話をされ、この信心を行って全ての物事を解決しましょうと話されたところ、その方は早速入信され、御自宅に御本尊様をお招きし、入仏式が執り行われました。その後、様々な問題を抱えながらも徐々に解決し始め、ついに長い間離れて暮らしていた御家族に会うため、御家族が暮らす九州まで行くことになりました。そこで上田さんは、御家族に会ったら一家和楽の信心によって、再び一家で暮らせるよう、信心の話をしてみてはどうかとその方に伝えました。しかし、宗教の話となると離れて暮らす家族に伝えるには勇気がいるものです。そうした不安を抱えながら九州へと旅立たれ、御家族と再会されました。
そしていざ、御家族と対面した時、御主人は家族に話さなければいけないことがあると言ったところ、御家族も御主人に話さなければならないことがあると言われたそうであります。まず御主人が日蓮正宗の信心を勧められ、今、東京都足立区の本修寺にて信心を行じていることを伝えると、御家族は大変驚かれ、そして喜ばれたのでありました。何故かと言えば、御家族も九州の地で縁あり、日蓮正宗に入信し信心をしていたからであります。そして、御家族もそのことを御主人に伝えようと意を決していたのですが杞憂に終わり、逆に喜びへと転じたのでありました。その後、御主人は喜びのもと帰京され、上田さんに一連の出来事を話されたのでありました」。
以上のことを最近ふと、そういえばこうした不思議な出来事もあったと感慨深く思い出しました。正に大聖人様が『義浄房御書』に、「法華経の功徳と申すは唯仏与仏の境界、十方分身の智慧も及ぶか及ばざるかの内証なり。されば天台大師も妙の一字をば、妙とは妙は不可思議に名づくと釈し給ひて候なるぞ」と仰せでありますが、この信心は実に不可思議極まりないものであります。埼玉と九州の地で離れて暮らす御家族が、共にそれぞれの地で折伏され日蓮正宗に入信し、信心に励まれるようになるとは、共に予想だにしないことであり、「災い転じて福となす」との言葉を絵に描いたような出来事に、当時私もまだ所化小僧の身であるなか、このような信心の現証に大変感動したことを覚えております。当然、日々の生活のなかで、大変な思いをすることもあるでしょうが、この信心さえ継続していれば、必ずその功徳利益の実証により物事が解決し、その信心をいつまでも深く持って行くことがどれだけ大事な事であるか。
この信心は「喉元過ぎれば熱さを忘れる」では元も子もない状況になってしまいます。ですから、現在、疫病の災禍渦巻く日々では、より一層信心に奮起し、妙法の利剣を持って疫病を対治し、安穏なる日々も油断怠りなく御本尊様に感謝申し上げ、信行の実践に励むことがいかに大事なことであるかをよくよく銘記して頂きたく存じます。
そして、不可思議偉大なる御本尊様の功徳利益を享受し、諸天の御加護を頂くためにも、また現在の疫病の災禍を乗り越えるためにも、どうか皆さまには今一度御本尊様への確信を抱き、ワクチン接種も随時行われておりますが、油断は禁物であります。実際、ワクチン接種を2回済んだ方でも感染されたり、病床が圧迫して重症化しても入院できない事態にまで陥っています。ですから、日蓮正宗の信心をしていれば感染しないと誤った考え違いを起こすことなく、まずは新型コロナウイルスに感染しない為にも、また万が一感染したとしても重症化しないようするためにも、いよいよ信行の実践に励んで頂きこの災禍を終熄させ、全世界が平和安穏になるよう心から念じ、唱題に唱題を重ね、「宗祖日蓮大聖人御聖誕八百年」の年に相応しい信行に励み、福徳増進して頂きたく心より根願致します。