やる気・動き・根気の三つの木

 宗祖日蓮大聖人様は『法華初心成仏抄』に、「法華経を以て国土を祈らば、上一人より下万民に至るまで悉く悦び栄へ給ふべき鎮護国家の大白法なり」と仰せになられております。

 よって、今日のコロナ禍も、頻発する天変地夭とも言うべき自然災害も、世の中のあらゆる犯罪や災禍など、大なり小なり、個人から国全体に至る幸不幸は、宇宙法界に厳然として具わる因果の法則によって、今日私たちが受けるべき果報でありまうすが、そのなかにおいて世の中のすべての人が憂い無く悦びに満ち溢れ、それぞれの国家が繁栄する原点は、仏法に説かれる正法正義、正に末法の今日において、宗祖日蓮大聖人様説くところの南無妙法蓮華経の御本尊様と、その教えにあることは言うまでもありません。

 当然、この唯一無二の正法正義に帰依することが肝要ではありますが、特に大事なことは、大聖人様が『法華初心成仏抄』に「三世の諸仏も妙法蓮華経の五字を以て仏になり給ひしなり。三世の諸仏の出世の本懐、一切衆生皆成仏道の妙法と云ふは是なり。是等の趣を能く能く心得て、仏になる道には我慢偏執の心なく、南無妙法蓮華経と唱へ奉るべき者なり」と仰せのように、また、かつて御法主日如上人猊下が「まず唱題をしていかなければ、何も始まらない」、そして「唱題が唱題で終わってしまってはいけない」と御指南されたように、無駄な我執を捨て去り、物事全てを唱題行で始め、その功徳利益をもって大聖人様の御心に叶う信行の実践に勤め、日々の幸せな生活を構築し、感謝の唱題行で締めくくることができるように、日頃からしっかりと心掛けていくところにあります。

 本年は特に「宗祖日蓮大聖人御聖誕八百年の年」であります。実践行あってこそ大聖人様仰せの信心であり、もし唱題行はおろか朝夕の勤行もままならない方がいらっしゃるとしたら、それは毎日の生活がなかなかうまくいかず、山あり谷ある人生につまづく大きな要因となることを、深く肝に銘じて頂きたいと存じます。

 そして、信行の実践に励む上において大切なことは、〝志〟です。大聖人様は、『白米一俵御書』に「凡夫は志ざしと申す文字を心へて仏になり候なり」と仰せになられており、仏道修行においては、〝志〟が非常に大事になってきます。

 私がかつて千葉県浦安市の浄徳寺住職として御奉公していた際、千葉布教区少年部広布推進会において、千葉県木更津市の仏心寺支部小学五年生の女の子が、総本山大石寺にて行われた全国少年部大会において総本山第六十七世日顕上人の御指南を拝聴し、「御隠尊猊下様(総本山第六十七世日顕上人)の『朝は三十分早く起きればよいのです。そして一生懸命にお題目を唱えていく、そこにあなた方のその日の一日の根本的な幸せな姿を建設していく形が現れてくると思います』というお言葉を聞いて、毎朝五時に起きて、勤行と三十分の唱題を続けていこうと決めました。決める前は、勤行するのがやっとで、たまに寝坊してさぼることもありました。そんな私が、お母さんに起こされて、五時に起きるのは、とってもつらかったです。でも、続けていくうちに、その時間に自然に起きられるようになりました。学校の陸上や合唱がある日は、六時半に家を出るので、頑張って四時半に起きて続けました」と発表されました。このように未来を担う少年部員が、日顕上人の御指南を忠実に守り、ただでさえ朝起きるのは子供だったら誰しもが辛いことですが、この少年部の子は、親御さんに言われた訳でもなく日顕上人の御指南を自分自身で志して実践されております。

 また現在、東京第二地方部鼓笛隊に入隊し小学4年生になる私の長女の話になりますが、一昨年、小学2年生の1月から鼓笛隊に入隊し、令和元年8月の全国鼓笛隊コンクールに向かって毎月練習に励んでおりました。東京第二地方部鼓笛隊は約50名という全国一の隊員数を誇り、大修寺支部の大森康平鼓笛隊責任者のもと、全国50チーム中、大編成の部で平成29年より2年連続して金賞を受賞する名実共なるチームであり、長女もそのチームの一員として加えさせて頂き、夏の全国鼓笛隊コンクールにおいて、本門戒壇の大御本尊様まします総本山大石寺にて、御法主日如上人猊下の御前(おんまえ)で異体同心の妙音を奏でることを目標に、更に最優秀賞受賞を目指して、毎月八王子市の廣妙寺様で行われる練習に参加していくことになりました。

 鼓笛隊練習は午前10時からの1時間唱題行から始まり午後3時半頃まで、長女も最初は周りの隊員についていくのがやっとで、練習終了後は帰りの車中でグッタリ寝てしまうほどでした。その練習にも徐々に慣れはじめると共に、長女の毎日の勤行・唱題にも変化が現れはじめました。毎朝毎晩の勤行においては、より大きな声でより真剣に行うようになり、勤行の太鼓も毎日進んで一生懸命叩くようになり、唱題会にでられる時は進んで参加するようになりました。今では、朝5時に起床し朝勤行を行い、その後学校の勉強や塾の勉強を行い、朝食をとり小学校へ登校し、帰宅後はすぐさま宿題ややるべきことを行い、午後6時からの夕勤行に参加し、塾がある日は午後8時前に帰宅するため、帰宅後すぐに夕勤行を行い、翌日のためにできるだけ早く就寝します。

 何よりも驚いたことは、令和元年度の鼓笛隊コンクールで、東京第二地方部鼓笛隊は最優秀賞にこそ届きませんでしたが、見事3年連続となる金賞を受賞し、翌日の全国少年部大会に参加した後、歓喜の中で他の鼓笛隊員と共に総本山より下山し、廣妙寺様に戻って参りました。そして、廣妙寺様からの帰りの車中で、「少年部登山はどうだった?」と感想を聞くと、開口一番「私も折伏がしたい。○○ちゃんと一緒に信心したい」と言うではありませんか。一僧侶としてまた、親としてこれほど嬉しく喜ばしいことはありませんでした。

 長女の鼓笛隊入隊を通して、信心の志を高く持てるようになりましたことは、大森鼓笛隊責任者が隊員に対し、常々「主体性」の大事さを教えて下さり、自ら進んで行動するその主体性の実践こそが、自らの信心への志に繋がっているものと思います。更にまた、日頃陰に陽にお世話頂く鼓笛隊スタッフの方々や、東京第二地方部各支部の鼓笛隊員の皆さんと共に異体同心して精進させて頂いている賜物と、心より感謝申し上げる次第であります。鼓笛隊練習は現在、コロナ禍のため中止となっておりますが、1日も早く再開し互いに切磋琢磨し、信心を磨き上げることができるよう、心より念願致しております。 

 最後に、大聖人様は『乙御前御消息』に、「いよいよ強盛の御志あるべし。氷は水より出でたれども水よりもすさまじ。青き事は藍より出でたれどもかさぬれば藍よりも色まさる。同じ法華経にてはをはすれども、志をかさぬれば他人よりも色まさり利生もあるべきなり」と仰せになられております。

 この信心、仏法においては発心が非常に大事であり、発心して崇高な〝志〟を立て信行の実践を積み累ねれば、御本尊様からの利生得益の大なることを大聖人様は御指南されております。そのためにも、今こそ「やる気・動き・根気」の三つの苗木を心中深くに植え付け成長させ、精進して頂きたく願います。特に折伏の面においては、やる気がなければ折伏も始まらず、やる気があっても動きが無ければ折伏も進展せず、根気が無ければ折伏を成就することは難しいと思います。ましてや日常生活においても同様であります。

 どうか皆様には、その意とするところをお汲み頂き、「やる気・動き・根気」の三つの木を心に根付かせ、粘り強い根気と信心の志をもって折伏弘教に打って出て、コロナ禍を乗り越え講中一結して一生成仏の道を正しく進んで頂き、あらゆる万難を排除し、歓喜に充ち満ちた日々をお送り頂けますよう、心よりお祈り申し上げますと共に、皆様方の更なる御精進を念願致します。