シカゴ・妙行寺に在勤して

 妙行寺はアメリカ第三の都市、シカゴ郊外の、イリノイ州デュページ郡ウエストシカゴ市にあります。

 シカゴの中心街から六十キロほど西に離れ、車で一時間半程、アメリカ一のターミナル空港であるオヘア空港からは車で四十分程の場所にあり、種々野生動物が戯れる、一万七千坪の敷地と、近隣に広大な自然保護林が広がる、大変緑豊かなところであります。

 

 妙行寺の管轄範囲は、北はカナダ国境に面した、雪国ミネソタ州から、南は先般ハリケーンの被害に見舞われたニューオリンズのある、メキシコ湾に面したルイジアナ州までの中西部十七州であり、面積にして日本の七倍の大きさです。
 所嘱信徒は、その半数以上がシカゴ以外の広大な地域に点在しており、寧ろお寺近辺に住んでいるメンバーは数えるほどであります。それでも、寺院近辺に住んでいる方は勿論のこと、シカゴ市内からも車や鉄道を利用し一時間以上かけて、日曜日を中心に、ウイークデイも昼夜を問わずメンバーが参詣されます。
 中でも毎月の御講等には、ミネソタ州から車で十五時間以上かけて参詣される方もおり、御会式や支部総会といった寺院で行われる重要行事には、飛行機やバスを利用し、本堂を埋め尽くすほどの非常に大勢のメンバーが各地より参詣されます。

 

 管轄範囲のアメリカ南部や人口の少ない地方・農村部では、保守的傾向の強い非常に強固なキリスト教社会があり、そういった地域では未だ人種差別、他宗教への偏見が存在し、その中での布教活動は困難を極めるところであります。これらの地域社会では、全ての常識が『聖書』を中心として成り立っており、州の公立学校の中には聖書の教えを頭から覆す進化論をそのカリキュラムから削除し、頑なに天地創造説を教えるところもあるほど、キリスト教の影響が根強く浸透しています。しかしながら、そういった地域であっても法華講のメンバーは正法護持の信心を貫き通し、必死に折伏弘教に邁進されております。

 

 特に妙行寺支部の講頭さん御夫妻は、ミネソタ州のイーグルベンドという、人口がわずか五百人ほどの町に住んでいらっしゃいますが、今から二十数年前家族と共に移住し、その町での日蓮正宗の信徒は、当時そのご家族だけで、子供達が学校へ行くと、悪魔の宗教を信ずる悪魔の子だといって、いじめられたり、時には学校の先生でさえも差別的な発言をするような状況であったそうです。
 しかし、そのような偏見や無理解を家族全員での信仰を根本に、良識ある社会人としての実証を示すことにより解決し、今では地域社会に認められる存在となっております。
 更にそのお子さんお孫さんも、御夫妻の意志を引き継ぎ、法華講の地域責任者や青少年部の中核を担い、妙行寺を代表する信徒として、寺院参詣、登山は勿論のこと、折伏弘教に励みつつ、家から飛行機で参詣する程の距離に住んでいながらも、毎月妙行寺に参詣し、寺院の保守・点検や整備を進んでかってでるというような、寺院の護持興隆発展に身命を尽くす強盛な信仰をされています。

 

 

 そして何よりも海外信徒が渇仰恋慕の思いを強く抱く総本山への登山は、シカゴから東京まで飛行機で十三時間、だいたい各メンバーが家を出て総本山へ到着するには丸一日以上かかり、それに伴う費用も多大な金額がかかる上、登山するには数日間かけなければならない等、様々な工面をし、毎年では無くても数年に一度、乃至海外信徒総登山といった記念登山に参加できるよう日々努力されています。

 今日宗門主導の海外布教は、世界約五十カ国、信徒数約六十六万人と目まぐるしい発展をみせており、世界各国あらゆる国と地域で言葉や文化の壁を越え、その国々や文化・慣習の事情で、信仰するにあたって様々な障害が生じたり、総本山へ登山するにも経済的負担が大きく、そう簡単には登山できない方々も多くいらっしゃいますが、ただひたすらに現世安穏・後生善処を祈り、それぞれの祖国広布の為、大いなる使命を以てご精進の誠を尽くされています。

 この目まぐるしい海外布教の発展とは裏腹に、自然災害、あらゆる事件・事故と、いつ何が起こるかわからない毎日にあり、私たちは三世に亘る生命の中のひとときにあって、宿縁深厚にして末法濁世の闇夜を生きる一切衆生にとっての、勇気と希望のともしびたる、この唯一無二の正法に縁することができたのですからこそ、今こそ真剣に「万事を閣いて信に生きる」ことが肝要であり、そこにこそ末法の御本仏宗祖日蓮大聖人様に対する御報恩の義が具わるのであり、また価値ある人生とこの世に生を受けた意義が存するのではないでしょうか。

 

仏教コラム

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