輪陀王(りんだおう) (平成27年10月)
むかし、インドの国に(りんだおう)という王様がいました。
この王様の力のみなもとは、白馬のいななく、高い鳴き声を聞くことでした。そして、その白馬は白鳥の鳴き声を聞いて、いななくのです。
ですから、この国ではたくさんの白鳥を飼っていました。
毎日まいにち白鳥が鳴きます。そして、その白馬のいななきを聞くと、王様は心がやすらかになり、体も健康になり元気いっぱいになるのです。
毎朝早くから白鳥が元気よく鳴き、そして白馬がいきおいよくなきます。
それで王様はますます力を得て、徳もそなわっていきました。
ですから、この国には、台風なや地震どの災害もなく、他国から敵が攻めてくることがあっても、他国の大将や兵隊は、輪陀王の言うことにしたがい平和に解決して、その国はだんだんと大きくなっていき、国民もみんな王様に守られて幸せでした。そのような平和な状況が数年続きました。
そんなある日、輪陀王の福徳が尽きたのでしょうか。過去からの悪い業によるものでしょうか。
あれほどたくさんいた白鳥が1羽もいなくなってしまいました。
白鳥が鳴かないので、白馬もいななきません。
それで、王様はだんだんと元気がなくなっていきました。
体の色もつやも悪くなり、気持ちもイライラするようになり、国民の心もだんだんと王様からはなれ、国内では悪い病気がはやり、台風や水害がおこり、目をおおうばかりの悲しい状態になり、国中が乱れていきました。
王様は「今ここで他国から攻められたら、この国は滅んでしまうだろう」と悩み苦しみ、なんとかこの状況を変えようと、国中に次のようなおふれをだしました。
【我が国はバラモン等の外道(げどう)の教えが中心である。しかし、一部ではお釈迦様が説かれた仏教もある。この2つの宗教は教えの内容もちがい、非常に仲が悪い。それでこのたび白馬を鳴かせた方の宗教を、国の宗教として重んじていきたい。だれかこの国の危機を救うべし】。
これを見た外道の人たちは、我こそはと競っていろいろな術を使って白馬を鳴かそうとしましたが、だれひとり鳴かすことはできませんでした。
また、昔は人を馬にかえたこともある外道の人も、1羽の白鳥さえ呼びもどすことができません。
そこで今度は、仏教を信仰する馬鳴菩薩(めみょうぼさつ)という僧侶が王様に、
「白馬を鳴かすことはたやすいことです。それには、国中のバラモン等の外道をやめさせ、仏法を弘めて国を治めていくべきです。そうすれば、必ず国もふたたび栄え、平和になるでしょう」といいました。
王様は「よくわかった。さっそくそうしよう」と言って、馬鳴菩薩の言葉を信じ、国中に仏教を信仰するようおふれをだしました。
そこで馬鳴菩薩はお釈迦様が説かれている、あらゆる仏さまに祈りました。
するとどうでしょう。さっそく白鳥が飛んできたではありませんか。
さっそく白馬がいななきます。王様はその白馬の声を聞いて顔色も良くなり、力もでてきました。そして、とうとう千羽の白鳥でいっぱいになりました。
千羽の白鳥が元気よく鳴くと、千頭の白馬もいきおいよくいななきます。
王様はその声を聞くと、しおれた花が生き返るように、暗やみに太陽がのぼり明るくなるように、急に元気を取りもどして以前より何倍も力がみなぎり、能力も倍増しました。
家来も国民も大喜びです。
そして国中も豊かになり平和になり、他国から攻めてくることがあっても、王様のすばらしい徳にふれ、向こうから頭をさげ、ついにインドでいちばん大きな国に発展していきました。
また、外道を信じる人たちはみな、仏教に帰依(きえ)して、それはそれは豊かで実りある大国が築かれたのでした。
日蓮大聖人様は
『曽谷殿御返事(そやどのごへんじ)』という御書に、「白馬とは日蓮のことです。白鳥とは大聖人の教えを信じる僧侶や信徒のことです。そして白馬のいななきは南無妙法蓮華経と唱える人々のお題目の声です。
そしてその声を聞いた大梵天王(だいぼんてんのう)、帝釈天王(たいしゃくてんのう)、日月天(にちがつてん)等の諸天善神(しょてんぜんじん)は、いよいよいきおいをまし、力を得て、大聖人の信心を正しく信仰する人々を必ずまもってくれます』と言われています。
「白馬とは日蓮大聖人です」とは、白馬のいななきによって王様や国中の人たちが幸せになったように、大聖人様は末法という今の時代の仏さまとして、全世界の人々を救い、幸福にしていく仏さまの力と、正しい仏法の力があり、また三徳といって親・主人・師匠の3つの徳をそなえておられます。
よって、私たちは大聖人様を仏の宝とし、御本尊様を法の宝とし、日興上人様をはじめ、御歴代の御法主上人猊下(ごほっすしょうにんげいか)様を僧の宝として信心していくことがもっとも大切です。
そして、私たちはこの仏、法、僧の三宝様を信じ、御本尊様に向ってお題目を唱えていけば、必ず功徳をつませていただき、幸せになることができます。
これは白馬のいななきが国中に響いて人々が幸せになったように、日本をはじめ全世界の人たちが本当に幸せになるには、世の中全ての人が正しい仏さまの教えを信じ、南無妙法蓮華経のお題目を唱えていく以外に方法がありません。
皆さんも、自分自身が幸せで立派な大人になれるように、一生懸命お題目を唱え勉強して、お友達にもこのお話をして、一緒に幸せになれるようにがんばっていきましょう。