大安吉日 (令和2年1月)
みなさんは新年を迎えて何か目標を決めましたか?
どんなことでも良いですから、今年1年の目標を立て、御題目を唱えながら頑張ってみましょう。
さて、今日はインドに伝わるジャータカ物語にあるお話をします。
インドのある都に住んでいる長者の息子と、となり村の庄の娘が結婚することになりました。
両家では何回も打ち合わせをして、結婚式の日取りも決まり、長者の息子である青年はこの日を楽しみにしていました。
しかし、日頃から占いにこっていた青年は、もちろん結婚する日も占い師に占ってもらい決めた日でした。
でも青年は当日になって心に迷いが出て、今まで頼っていた占い師とは違う占い師に占ってもらいたくなりました。
青年は、
「先生はこの都で1番と聞いてやってきました。実は私は今日結婚することになっています。今日は良い日だと占ってもらって今日に決めました。でも本当に今日が私の結婚にとって最良の日かどうか、ちょっと不安になったので、都1番の大先生に占って頂きたいと思います」と占い師に言いました。
占い師は心の中で、
「今日結婚するというのに、今になって良い日が悪い日か占ってくれというのか、この男の心はいったいどうなっているのだろう。相手であるお嫁さんのことは考えられないのだろうか。こんな男はどうせ相手を幸せにすることなんてできないだろう」と思い、青年に「そうですか。それはおめでとうございます。それでは慎重に占ってみましょう」と言いました。
占い師は数本の棒を動かし、困った顔をして青年に、
「誠に残念ですが、私の星占いでは、あなたにとって今日は悪い日と出ました。明日は大安吉日(たいあんきちじつ)と出ています。明日、結婚式を挙げた方が良いでしょう」と言いました。
青年はその言葉を聞くと、すっかり信用してお嫁さんと相談もせず、勝手に明日結婚しようと心に決め、花嫁支度をしている娘のところへ行くことをやめてしまいました。
一方、お嫁さんになる庄屋の娘の家では、昨日から嫁入りの準備をして、いつでも新郎である青年を迎えられるように、花嫁衣装を着て待っていました。
しかし、約束の時間になっても新郎はやってきません。
2時間、3時間待っても、新郎家族一行はやってきません。そして、とうとう夕暮れになってしまいました。
1日中、花嫁衣装を着て待っていた娘は、声を上げて泣き出しました。
娘の花嫁の両親は腹を立て、
「町の連中はこんないいかげんな奴だったのか。もう大事な娘を町のいいかげんな男の嫁にはやれん。前から娘を嫁にと望んでいた同じ村の男と結婚させよう」と決めました。
こうして、村の若者と娘の結婚式が庄屋の家で急きょ取り行われました。
村の若者は、あきらめていた大好きな娘と一緒になることができて、天にものぼる気もちでした。
娘の両親も、村人もそんな若者の喜びようをみて、これで良かったと思い、夜おそくまでご馳走を食べ、お酒を飲んでお祝いしました。
娘も、もともと結婚するはずだった青年を愛する心も悲しみも消え、これで本当に良かったと、村の青年と結婚した喜びをかみしめました。
次の日の朝のことです。都の青年が、親族の行列とともに花嫁を迎えにきました。
青年は、
「昨日、予定していた結婚式ですが、星の巡りが悪いということで、今日に変更して、ただいま花嫁を迎えにきました」と言いました。
この青年の、何の反省もない言葉に、娘の両親も村人たちも、ただあきれるばかりでした。
娘の両親は、
「なんですか。約束を破っておいて今ごろ迎えにくるなんて。昨日は1日中待っていたんですよ。それにもう娘はほかの人に嫁にやりましたから帰って下さい」と言い、
青年はびっくりし、
「えっ、あなたは私に娘さんをあげると約束したじゃないですか。1日遅れたからといって、約束を守らないなんてひどいじゃないですか」と言うと、村人たちは怒りだし、
「お前たち都の人間は、私たちを田舎者だと思ってバカにして、何の連絡もしないで勝手なことをして、反省もしていないのか」と青年に言いました。
青年は負けずと、
「それは娘さんを幸せにしたいから、最良の日かどうか占ってもらったんです。日の悪い日に結婚して不幸になっても何にもなりませんからね」と村人たちに言い返しました。
そこへ、ちょうど1人の僧侶が通りかかり、
「星の巡りがいいとか、悪いとかで、良い日、悪い日が決まるわけではありませんよ。お嫁さんを迎えるという良いことを行う日が、1番良い日に決まっているのです。今日は大安吉日だといっても、こうして大げんかをして嫁さんもきてくれないのですから、こんな悪い日はないのですよ」と笑いながら諭しました。
都の長者一家は占いにこだわったばかりに、星占い師にもバカにされ、お嫁さんをもらいそこない、村人からは怒られ、さんざんな目に合いました。
皆さん、いかがでしたか。
良い日、悪い日は、自分が良い行いをするか、悪い行いをするかによって決まるものです。
しかし、日本では、友引の日には葬式をしない。仏滅の日は縁起が悪いから結婚式をしないということがよく言われます。
この友引とか仏滅、大安という言葉が、カレンダーに書いてあるのをみたことはありませんか?
こうした言葉は中国で時刻の吉凶占いとして使われていた六曜というものからきていて、先勝(せんしょう)・友引(ともびき)・先負(せんぷ)・仏滅(ぶつめつ)・大安(たいあん)・赤口(しゃつく)というものです。
この六曜は、室町時代に日本に伝えられ、江戸時代の中ごろから現在まで、色々な行事を決める目安として使われるようになりました。
今でも火葬場によっては、友引の日はお休みになっています。
しかし、これは仏教の教えとはかけ離れたもので、私たちはこの六曜にこだわる必要はありません。
これと同じように、星占いをはじめ、色々な占いが世間ではありますが、本当の人の運命や幸福には全く関係なく、人の運命、幸不幸は自分の行いに全ての原因があります。
そして、私たちが自分の運命を良い方向へ変えて行く方法は、御本尊様に対する正しい信心によってのみ変えることができ、自分自身で築いていくものです。
また、自分自身の心が中心になって、色々なことをしようとすると、自分自身の煩悩という迷いの心や、周りの人たちによって振り回されてしまうだけです。
ですから、私たちは日頃から御本尊様に御題目を唱えて、正しい生活や判断が出来るようになることが大事なことです。