心を磨く (平成30年9月)

夏休みが終わり、学校生活が始まったと思います。
そして、4月に新しい学年、新しいクラスになってから、もうすぐ半年がすぎます。
新しい友だちはできましたか?

世の中では「類は友をよぶ」と言われるように、心やさしい人の周りには、同じく心やさしい人が集まり、いじめっ子の周りには、いじめっ子が集まり人を傷つけるでしょう。

ですから、良い友だち、素晴らしい親友がほしいなぁと思うならば、まず自分が心やさしく思いやりのある人になることをめざすことが大切です。

そして、人として大きく成長し、立派な大人になるためには、自分自身の心を磨くということが必要です。

 

さて、テレビで放送していたお医者さんのドラマのなかで、「医者は、腕が良ければ何したっていいんだよ…」というセリフがありました。

むずかしい手術を成功させ、病気を治すことができさえすれば、医者としての人がらや性格なんて関係ない…このような意味に聞こえます。

 

たしかに、皆さんやお父さん、お母さんが救急車で病院にはこばれたら、「どんな医者でもいいから、とにかく助けてほしい。助けてくれればそれでいい」と思うでしょう。

そうした気もちになるのは当然です。

しかし、お医者さんは、本当に医者としての力さえあればいいのでしょうか?

 

むかしから、「医は仁術(じんじゅつ)」と言われています。

江戸時代の学者・貝原益軒(かいばらえきけん)は『養生訓(ようじょうくん)』という書き物に、「医は仁術なり。仁愛(じんあい)(人を愛し、人を思いやる)の心を本とし、人を救ふを以て志とすべし」とあります。

これは、医術はただ人のからだを治療するだけではなく、人としての徳をもって施す術である、という意味を言っています。

つまり、「医は仁術」という言葉は、医者としての力だけではなく、患者さんの気もちを考え、思いやることが大切であることを教えています。

 

また、日本中のお医者さんの集まりである日本医師会の規則の中にも、「医師はこの職業の尊厳と責任を自覚し、教養を深め、人格を高めるように心掛ける」とあります。

ですから、お医者さんはお医者さんとしての自覚をもって、患者さんに安心してもらえるようにしなければいけないことが決められています。

皆さんも、風邪をひいたり、ケガをしたり、虫歯になって病院に行って、先生が怖かったらイヤですよね。

とくに歯医者さんでしたら、上手な先生がいいことはとうぜん、さらにやさしい先生に治療してもらう方が安心ですよね。

 

それでは、このことを私たちに当てはめて考えてみましょう。

私たちは日頃から勤行をしたり、お寺に通ったり、総本山大石寺に登山すると思います。

これは、私たちが日蓮大聖人さまの仏法を信じて、幸せな毎日を過ごせるようにするためです。

大聖人さまの仏法は、世の中でただ一つ正しい教えであり、ほかのどんな宗教を信じても幸せになるどころか、不幸な人生になってしまいます。

それは、信じている教えが間違っているからです。

しかし、大聖人さまの教えが正しいからといって、信じていれば、毎日勤行・唱題していれば、お寺にお参りしていれば、何をしてもいいわけではありません。

仏さまの教えは、人が歩むべき道を教え、どのように毎日を過ごすべきかを教えています。

ですから、大聖人さまの正しい教えを信じている者は、正しい生活を送り、周りの人たちから好かれ、尊敬されるようでなければなりません。

もし、皆さんが悩んだり困っている友だち、すごく仲の良い友だちと一緒に信心したい、お寺に行きたいと思い、それを伝えようとします。

しかし、その伝え方がいいかげんだったり、日頃の学校の生活で、よく忘れ物をしたり、学校に遅れたりサボったり、言葉づかいが悪かったりしたら、その友だちも私たちが信じている大聖人さまの教えを信じようとはしないと思います。

どんなに大聖人さまの教えが正しいことを言っても、それに見合うだけの自分自身の生活や態度が悪かったら、誰も信用してくれないし、逆に変な宗教にさそわれていると思われてしまいます。

大聖人さまは、『崇峻天皇御書(すしゅんてんのうごしょ)』に「教主釈尊(きょうしゅしゃくそん)の出世の本懐(ほんがい)は人の振る舞ひにて候(そうら)ひけるぞ」と仰せられ、仏さまの尊い教えを信じる者は、人として発言・行動が正しくなくてはならない、と教えられています。

 

また、御法主日如上人猊(ごほっすにちにょしょうにんげいか)さまは、
「何が一番大事かと言えば、我々の人格である。仏様は人格の完成者であるから、その意味から我々も信行学を磨き、人格を磨いていくことが大切である」と仰せであります。

猊下さまも、私たちが周りにいるすべての人たちから、信頼され愛される存在になることが大切であると仰せです。

そのためには、どうしたら良いでしょうか。

それは、自分がされたり言われたりしたらイヤだなと思うことを、友だちや周りの人たちにしない、毎日の勤行や唱題を真剣に行い、清く正しい素直な心をもち、人を心から思いやることを忘れないようにしましょう。