感謝の心(平成28年5月)

むかし、インドのある村に1人のおばあさんがらしていました。

そのおばあさんのたった1つの楽しみは、毎月1度だけお坊さんに来ていただいて、お経を唱えてもらって、その後にお坊さんのお説法を聞くことでした。

 

もう何10回もいろんなお坊さんのお話を聞くことができ、そのなかには立派なお坊さんもたくさんいました。

 

ある月のことです。その日はあまり話が得意ではない年老いた老僧が、おばあさんの家にきました。

老僧はお経を唱え終わって、いざお説法をしようとしましたが、
「このおばあさんは今まで立派なお坊さんのお説法を聞いていて、私よりいろんなことを知っているはずだ、今日わたしが話をしようと思っていることも、きっと前に聞いて知っているにちがいない」と考え、急に自分に対して自信がなくなり、そのままお説法をしないで帰ってしまいました。

おばあさんは、今日はどんなお話が聞けるものやらと楽しみにしていたのに、急に帰られてしまい、今までこのようなことがなかったので、どうしてだろうとなやみました。

そして、お説法をしていただけなかったのは、何か自分に落ち度があったのかもしれないと、あれこれ反省をしました。

 

そして、おばあさんは「はた」と思い当たることがありました。
それは毎月自宅まで来て下さり、お説法をしていただくことは、御供養しているのだから当然だと考えていたことでした。

おばあさんは自分の考え違いをを大変恥ずかしく思いました。

そこで、さっそく次の日の朝お寺に参詣し、仏さまと老僧にそのことをおわびしました。

そして、もっと感謝の心をもって、一生懸命信心していくことをお誓い申し上げました。

 

老僧は反対に、自分の勤めを果たさなかったこと、自分の至らなさを深く反省し、今後ますます仏道に精進することを誓いました。

 

これは、老僧がお説法をされなかったことを、おばあさんが自分の信心のいたらなさととらえ、その結果今まで以上に自分から信心修行をもとめ、よりいっそう喜びあふれる信心の実践をするようになったというお話です。

 

つまり、同じことでもその人のとらえかたによって、感謝の心にも恨みや疑いの心にもなります。

ですから、同じことでもその人の受け取り方によって、良い方向へも悪い方向にもなりかねないということです。

 

 

もう1つのお話をします。これは「うそのお告げ」という韓国のお話です。 

韓国のある地方に李(り)という青年がいました。
李は地方の小科(役人になるための試験)に合格し、さらに大科(役人の資格を与える韓国政府の試験)をめざして、韓国の首都ソウルの北部にある中興寺(ちゅうこうじ)というお寺で、友人の崔(さい)と金(きん)と3人で受験勉強をしていました。

李は信仰心が篤く、毎朝早く起きて、本堂でお参りし、大科の受験の合格を祈っていました。

 

ある朝、崔と金の2人は、李をからかってやろうと本堂の仏像のうしろにかくれて、
「李よ、おまえの信心深さに免じて、来年の試験の問題をあらかじめ教えてあげようぞ。易経はこれ、書経はあれ、論語、孔子はこの章、大学、中庸はあの章、これは必ず出題されるからよく勉強せよ。疑うことなかれ」と、おごそかな声で言いました。

 

これを聞いた李は喜び、涙を流して仏さまにお礼を申し上げ、それからというものは、他の一切のものには目もくれず、仏さまのお告げのところだけを真剣に勉強しました。

それを見ていた2人は、はじめは面白がって笑っていましたが、こんなに信じこむとは思わなかったので、だんだん心配になって、ある時、あれは自分たちがからかってしたことだと打ち明け、他の勉強もするように言いました。

しかし、李は「ぼくの真心の信仰心は、仏さまが必ず御覧になっているはずだ。だからあの朝のお告げは仏さまが君たちに言わせたものだと信じているよ」と言って、なおも同じ勉強をし続け、ついに全部暗記してしまいました。

そして、試験当日、不思議にも崔と金がからかって言ったところだけが試験に出題されました。
当然、李は全問正解して1番で試験に合格しました。

 

このお話は、あらゆることを素直に受け止めることが良い結果をもたらすという、たとえ話です。

 

インドのお話では、おばあさんが今まで当たり前だと思っていたことを反省し、感謝の心を持つようになりました。
次の韓国のお話では、何事も素直に受け取るめることの大事をいっています。

 

まとめてみますと、良いことも悪いことも、楽しいことも、辛いことも、誰のせいでもなく、すべて自分に原因があり、それを素直に受け止め、常に御本尊様に感謝の心をもって南無妙法蓮華経のお題目を唱えてゆけば、必ず良い結果になる、ということです。

特に、何か真剣に願うことがあれば、いつも以上にお題目を唱え、一生懸命祈ってゆけば必ず御本尊様はその気持ちに応えてくれます。

それだけのお力が御本尊様にあるこを信じて、これからも頑張っていきまいしょう。

 

最後に、お母さんはいつも皆さんが立派な大人になれるよう祈り、毎日食事を作ってくれたり、洗濯やお掃除や身の回りのお世話をしてくれています。 

特に今日は母の日ですから、お母さんに感謝の気持ちを込めて、「いつもありがとう」と言いましょう。

そして、お母さんに心配かけないように、素直で正直な心、思いやりの心を大切にしてください。