よごれたごちそう(平成26年3月)
むかしインドのある地方に、大きな土地を持ったお金持ちの長者がいました。
この土地には、いろいろな食べ物がさいばいされ、しゅうかくの時期になると大勢の人が働きにきました。
そして毎年しゅうかくが終わるころになると、長者は最高のごちそうを働いてくれた人達にふるまってあげました。
働いた人達はお給料とは別に、長者が心のこもったお料理をふるまってくれることが楽しみでした。
中でも、最高のお肉と野菜を使ったシチューは一番の人気でした。
その年もシチューを作る料理人は、庭先で朝早くから時間をかけてお肉と野菜を煮込み、ゆっくりやわらかく煮込んだシチューはおいしそうな香りがして、料理人も今日のシチューは最高の出来だと思いました。
そう思っていた時、空を飛んでいたトンビがくるりとまわったらとたん、糞をしました。
そして、その糞がなんと偶然にも、おいしいシチューが料理中の大なべにポチャンと入ってしまいました。
料理人はあわてて、これをすくい取ろうとしましたが、どれが糞やら肉やら見分けがつきません。
まして熱い汁の中で、糞はすぐにとけてしまいました。
料理人が、あたりを見まわすと、誰も気づいた様子はありませんでした。
「困ったことになった。これから作り直すにも、材料も時間もない。これだけの量のシチューだったら、少し糞が入っても味もかわらないだろう。みんなには悪いけど、今年はこれを召し上がって頂くしかない」と、料理人は、うしろめたい気持ちになりながらも、知らんふりをすることにしました。
良いことも悪いことも、かくしごとはいけないし、正直が一番であることは、料理人も充分わかっていましたから、他の料理人と一緒に、テーブルにできたての料理をならべる時も、おろおろどきどきしていました。
そして、パンやお肉やお魚や野菜、料理人が作ったシチューと、お酒やくだものがテーブルに並べられ、長者がテーブルの真ん中に座り、みんなに、「今年も皆さん、よく働いてくれました。おかげで今年はいつもより豊作でした。皆さんありがとう。えんりょなく食べて下さい」と、挨拶しました。
まず長者がおいしそうにシチューを食べた時、思わず料理人は目をそらしてしまいましたが、長者は「このシチューはうまい」と言い、他の人達も「本当だ。このシチューが一番うまい」とほめました。
料理人は、穴があったら入りたい気持ちで、おかわりをついでまわりました。
ひと段落した頃、長者が料理人たちに、「今日はおいしい料理を作ってくれてありがとう。あなたたちも食べなさい」と声をかけました。料理人たちは、「ありがとうございます。いただきます」と言って、席につき、料理を食べ始めました。
その中で、シチューを作った料理人だけは、お皿につがれたシチューを、一息に目をつむって飲み込みました。
まさか、自分もこの料理を食べることになるとは思っていなかったのです。
みんなは「おいしい、おいしい」と言って食べていたシチューは、料理人にとっては本当においしかったのでしょうか。まずかったのでしょうか?
さて、このお話にはこんな意味があります。
1番目に、世の中のひとたちは、本当はきたないものをきたないものと思わない、気づかないということ。
正しいもと間違ったものを理解できないで生活しているということです。
ですから、間違った仏様や宗教を信じると、良いことがおきるどころか、逆に不幸な生活になってしまいます。
そして、糞が入ってとけてしまったシチューは、ふつうのシチューと見た目はそっくりで、似ているから、なかなかわかりません。
だから、糞の入った料理を食べたひとたちも、すっかりだまされて、「おいしい、おいしい」と言って食べたように、世の中でも正しいものを理解することが本当に難しいということです。
そして、悪いものと区別することができないから、だまされてしまいます。
今、世の中では「オレオレさぎ」という事件がたくさんおこり、多くの人たちがお金をだまし取られる事件がおきています。
そのように、正しいことと間違ったことを見抜く力が、私たちには必要です。
2番目に、トンビの糞が入ったシチューを料理人も食べることになりました。
これは、因果応報といって、自分が行ったことは、必ず自分に報いとして返ってくる、ということです。
ですから、みなさんは正しいことを行えば良いことが返ってくる。
逆に悪いことをしたら、かならず悪いことが自分に返ってくる、ということを知りましょう。
最後に、トンビの糞が入っていると知っている人は、「おいしい」と言って、そのシチューを食べることはできませんね。
同じように、赤信号ではわたってはいけない、ということを知らない人は、道路をわたって車にはねられてしまうかもしれません。
そして、世の中でも、うらないや神社や他の間違った宗教を信じていると、イヤなことや悪いことがおきる、ということを知らない人がほとんどです。
それは、糞が入っていると知らないで、「おいしい」と思ってシチューを食べている人と同じです。
ですから、まわりに困ったり悩んだりしているお友達がいたら、「南無妙法蓮華経」を唱えると幸せになれるよ、と教えてあげましょう。
また、たとえ困っていなくても、正しい仏様の教えを信じると初めて本当の幸せになれるんだよ、と教えてあげましょう。
そして、皆さんは何でも正直になること、すべての友達に優しくすることを心がけましょうね。