一如 令和4年6月号

住 職 よ り

 本年も上半期最後の月となりました。コロナ禍も下火になりつつも、欧米ではサル痘の発症等が報告され、疫病の流行も、ロシア軍によるウクライナ侵攻も、出口の見えない惨憺たる状況となっております。こうした世間の惨状を目の当たりにする今、私たちはより信行の実践に励み、世情の浄化矯正を祈り、一人でも多くの方々の笑顔溢れる幸福なる毎日を実現できるよう正法正義に帰依せしめる為にも、折伏実践すべきで時であります。
 先日、長女の国語の宿題として、教科書の音読を聞いていたところ、ハッとさせられる文章を耳にいたしました。それは心理学者で宇都宮大学・中村真教授の、『笑うから楽しい』という文章でありました。その内容として「私たちの体の動きと心の動きは、密接に関係している。例えば、悲しい時に泣き、楽しいときに笑うというように、心の動きが体の動きに表れる。また、脳は体の動きを読み取って、それに合わせた心の動きを呼び起こし、たとえ作り笑顔でも脳は表情から、『今、自分は笑っている』と判断し、笑っている時の心の動き、つまり楽しい気持ちを引き起こす。また表情によって呼吸が変化し、笑っている時は鼻の入り口が広くなり、多くの空気を吸い込むことによって、脳内の血液温度が下がり、自然と楽しい気持ち、心地よさを感じる(趣意/全文は下記記載)」と述べられております。
 これらは全て心理学、科学的見地より明らかにされていることであり、正に仏法で説かれるところの色心不二(しきしんふに)、心と体が一体不二(いつたいふに)であることを、研究結果により証明されるものであると拝せられます。
 御先師日顕上人は、「唱題は最上にして最善の 心と身との鍛(きた)へなりけり」との御歌を詠(よ)まれておりますように、唱題行を実践するに当たっては、大きな声で集中して真剣に行じて、身心を浄化し鍛錬することが肝要であります。ましてや、全身全霊を持って唱えるお題目には、無上の功徳利益が具わります。しかし、大きく呼吸し大きな声でお題目を唱えることは、なかなか自宅では叶わないことであると思います。ですからこそ、寺院に参詣して思う存分唱題行に徹することが大事大切なこととなってきます。先月の御講でも申し上げましたが、総本山への登山参詣は勿論のこと、日頃の寺院参詣による罪障消滅宿業打開、福徳増進の為にも、是非とも足繁く寺院参詣し、歓喜溢れる境界を築き上げて頂きたく存じます。

御法主日如上人猊下御言葉

 『聖愚問答抄(しようぐもんどうしよう)』を拝しますと、「人の心は水の器(うつわ)にしたがふが如く、物の性(しよう)は月の波に動くに似たり。故に汝(なんじ)当座は信ずといふとも後日は必ず翻(ひるが)へさん。魔来たり鬼来たるとも騒乱(そうらん)する事なかれ。夫(それ)天魔は仏法をにくむ、外(げ)道は内道(ないどう)をきらふ。されば猪(いのしし)の金山(きんざん)を摺(す)り、衆流(しゆうる)の海に入(い)り、薪(たきぎ)の火を盛んになし、風の求羅(ぐら)をますが如くせば、豈(あに)好(よ)き事にあらずや」と仰せであります。
 そもそも人の心というものは、水に従うが如く、移ろいやすく、変わりやすいのであります。したがって、初めは固く決意していても、途中で思わぬ障魔に紛動されて、目的を達成せずに終わることがよくあります。
 まさにこの御文は、こうした障魔に誑(たぶら)かされず、不退転の信心を貫くように御教示遊ばされているのであります。すなわち、「猪と金山」「衆流と海」「薪と火」「風と求羅」の譬えを用(もち)いられて、いかなる障魔が競い起ころうとも固い決意をもって、いよいよ信心を強盛にしていくよう諭(さと)されているのであります。
 「猪の金山を摺り」とは、猪が金山の光っているのを見て憎み、身体をこすりつけてその輝きを消そうとしますが、身体をこすりつければつけるほど、かえって金山は輝きを増すように。「衆流」とは、多くの川の水の如き大難が、海の如き法華経の行者に競い起こるように。「薪の火を盛んになし」とは、火に薪を加えることによって火の勢いがますます盛んになるように。「風の求羅をます」とは、迦(か)羅求羅(らぐら)という虫は身体は微細でありますが、ひとたび風を得れば、その身体は大きくなると言われているように、障魔が競い起きることが、かえって信心を高めていく機縁になると仰せられているのであります。
 されば『四条金吾殿御返事』には、「法華経の行者は火とぐらとの如し。薪と風とは大難の如し。法華経の行者は久遠長寿の如来なり。修行の枝をきられまげられん事疑ひなかるべし。此より後は『此経難持(しきようなんじ)』の四字を暫時(ざんじ)もわすれず案じ給ふべし」と仰せられているのであります。
 すなわち、法華経の行者は、信心が進めば様々な難に値(あ)うことは必定(ひつじよう)であります。しかし、障魔が競い起こることによって、かえって信心を強盛にしていく絶好の転機となると仰せられているのであります。
 つまり、たとえいかに不退転の決意を固めていても、いざ現実に障魔が競い起これば、動転して驚き慌てる人が多いのであり、それを乗りきるためには強盛な信心を貫き通す以外にないことを、先程の四つの譬えをもって教えられているのであります。

五月度 広布唱題会の砌 令和四年五月一日 於 総本山客殿

妙眞寺よりお知らせ

★五日(日)は午前九時より広布唱題会・永代御経日を行い、終了後、寺院清掃を行って頂きますので、何卒宜しくお願いします。
★八日(水)午後六時四十五分より、新宿・大願寺において、六月度広布推進会が開催されます。三名の参加割当となっております。なお、七月度広布推進会は、七月六日(水)午後六時四十五分より、新宿・大願寺にて開催されます。
★十一日(土)午後七時、十二日(日)午前十時三十分・午後二時から、宗祖日蓮大聖人御報恩御講を奉修致します。また、十二日(日)午後一時より、若葉会御講を行います。
★令和四年度法華講講習会登山を申し込まれた方々におかれましては、遅くとも午後十二時までには登山事務所にて添書手続きを完了してください。
★七月二十四日(日)に、第一回妙眞寺団体登山を行います。今回の登山は、観光バスをチャーターする予定です。バスを御利用の方は八時三十分に妙眞寺を出発致しますので、遅くとも八時十五分頃までには、妙眞寺にお集まり頂きたく存じます。自家用車で御登山されます方は、当日休憩坊をお願いしますので、午後十二時頃までに休憩坊に集合して頂きたく存じます。

星野会計部長より令和3年度法華講妙眞寺支部会計報告

 

「笑うから楽しい」  中村真

 私たちの体の動きと心の動きは、密接に関係しています。例えば、私たちは悲しいときに泣く、楽しいときに笑うというように、心の動きが体の動きに表れます。しかし、それと同時に、体を動かすことで、心を動かすこともできるのです。泣くと悲しくなったり、笑うと楽しくなったりするということです。

 私たちの脳は、体の動きを読み取って、それに合わせた心の動きを呼び起こします。ある実験で、参加者に口を横に開いて、歯が見えるようにしてもらいました。このときの顔の動きは、笑っているときの表情と、とてもよく似ています。実験の参加者は、自分たちがえがおになっていることに気づいていませんでしたが、自然とゆかいな気持ちになっていました。このとき、脳は表情から「今、自分は笑っている」と判断し、笑っているときの心の動き、つまり楽しい気持ちを引き起こしていたのです。

 表情によって呼吸が変化し、脳内の血液温度が変わることも、私たちの心の動きを決める大切な要素の一つです。人は、脳を流れる血液の温度が低ければ、ここちよく感じることが分かっています。笑ったときの表情は、笑っていないときと比べて、鼻の入り口が広くなるので、多くの空気を取りこむことができます。えがおになって、たくさんの空気を吸いこむと、脳を流れる血液が冷やされて、楽しい気持ちが生じるのです。

 私たちの体と心は、それぞれ別々のものではなく、深く関わり合っています。楽しいという心の動きが、えがおという体の動きに表れるのと同様に、体の動きも心の動きに働きかけるのです。何かいやなことがあったときは、このことを思い出して、鏡の前でにっこりえがおを作ってみるのもよいかもしれません。

【笑うから楽しい 中村真(心理学者) 小6国語教科書 光村図書】より