大聖人様御聖誕の月を迎えて、今こそ強盛なる信心を!

 最近、朝起きて空を見上げると澄み切った青空が一面に広がり、夜になると美しい月明かりと無数の星々が心を和ませます。そうした華麗な冬空から地上に目を移すと一変、新型コロナウイルスの感染拡大、いわゆるコロナ禍となって3年目を迎え、現在、全世界での感染者は約3億人、死者は約550万人となっております。日本国内では190万人の感染者、1万8千人の死者となっており、正に100年に1度の大疫病が猛威を奮っている状況であります。

 遡ること100年前のスペイン風邪では、大流行した3年間で全世界の感染者は約5億人、死者は推定で5000万人から1億人、日本での感染者は2380万人、死者は39万人ということですから、当時の人口や医療の発達、現今の衛生環境を鑑みれば、一様に比較できないものではありますが、100年前のスペイン風邪がどれだけ全世界の人々を恐怖に陥れたかが窺い知れます。
 また、こうした大疫病の流行が、宗祖日蓮大聖人御聖誕記念の節目に惹起していることを見るにつけ、私たち日蓮正宗の僧俗は、末法の御本仏様の宇宙法界すべてを御統率御照覧遊ばされる偉大にして畏敬の念を抱くべき存在であり、それを良からんとする大きな障魔の用きを目の当たりにするところであります。

 ちなみに、日本国内における、毎年の季節性インフルエンザの感染者は平均約1000万人、死者は平均約3500人とのことですが、やはり新型コロナウイルスとの違いは、ワクチン接種体制の充実とタミフルやリレンザといった特効薬の存在によって、致死性の少なさがその違いを生み出しているようであり、いずれにせよコロナ禍の今後の見通しは、ただ御仏智しからしむるところであり、私たちは今こそ大聖人様の御金言を拝して、世の中から疫病を排除すべく勇猛精進すべき時を迎えております。

 大聖人様の御教示を拝しつつ疫病流行の原因を拝しますと、まず『唱法華題目抄』には、「日本国中の諸人は仏法を行ずるに似て仏法を行ぜず。適仏法を知る智者は、国の人に捨てられ、守護の善神は法味をなめざる故に威光を失ひ、利正を止め、此の国をすて他方に去り給ひ、悪鬼は便りを得て国中に入り替はり、大地を動かし悪風を興し、一天を悩まし五殻を損ず。故に飢渇出来し、人の五根には鬼神入りて精気を奪ふ。是を疫病と名づく。一切の諸人善心無く多分は悪道に堕することひとへに悪知識の教を信ずる故なり」と仰せであり、あらゆる邪宗の跋扈と人々の仏法の道理に暗いが故の悪法への信仰により、諸天善神が法味を得られないこととなって、威光勢力を失い他方に去ってしまい、逆に悪鬼魔神が入れ替わるように勢力を増して、人々を悩ませ苦しませんとするが故に、大地震を起こしたり暴風雨等悪天候を起こして、農作物が実らないようなさしめ、食べ物に苦労させ、人々から精気を奪うように暗躍し、また悪法を信じる人々の謗法の害毒によって疫病が起こる因縁を説かれております。更にまた、日本各地での大地震や大雪、海外でも南太平洋のトンガ沖での海底火山爆発による津波等の災害などが、コロナ禍に追い打ちを掛ける状況となっております。

 また、『曽谷殿御返事』には、「日本国の人々癡かの上にいかりををこす。邪法をあいし、正法をにくむ、三毒がうじゃうなり。日本国いかでか安穏なるべき。壊劫の時は大の三災をこる、いはゆる火災・水災・風災なり。又減劫の時は小の三災をこる、ゆはゆる飢渇・疫病・合戦なり。飢渇は大貪よりをこり、やくびゃうはぐちよりをこり、合戦は瞋恚よりをこる」と仰せのように、世の中に兵革・穀貴・疫癘の三災が起きる原因を、人々の三毒強盛なる命が盛んなる故であり、大聖人様が『減劫御書』に「減劫と申すは人の心の内に候。貪・瞋・癡の三毒が次第に強盛になりもてゆくほどに、次第に人のいのちもつゞまり、せいもちいさくなりもてまかるなり」とも仰せのように、末法における唯一無二の正法を信ずることなく、悪法を信じて止まず、三毒煩悩の用きが増し、疫病蔓延は末法五濁悪世、人の寿命も縮まり身長も小さくなるという減劫と言われる時を生きる人々の愚癡を具体的要因とされております。
 すなわち『観心本尊抄』に、「瞋るは地獄、貧るは餓鬼、癡かは畜生」と言われる貪欲・瞋恚・愚癡の三毒が強盛となり、煩悩の用きも盛んとなり、それ故世間ではあらゆる欲望が絶えず渦巻き、物質文明の発達に精神的成長が追いつかず、また正しい判断と行動を左右する人間力の欠如によって、瞋りの命が無限に涌き出でたり、道義の退廃による人として恥ずべき所作振る舞い、不平不満や心ない発言によって、様々な事件を頻発させているのが世情の現況であります。

 さて、『日女御前御返事』には、「今日本国の去年今年の大疫病は何とか心うべき。此を答ふべき様は一には善鬼なり。梵王・帝釈・日月・四天の許されありて法華経の怨を食す。二には悪鬼が第六天の魔王のすヽめによりて法華経を修行する人を食す」と、疫病災禍の原因は1つに善鬼が法華経の敵となる邪宗謗法の諸人を食するが故であり、2つには悪鬼が第六天の魔王の下僕となって正法を行ずる諸人を食するためであると仰せであり、同抄には「此をもて上の二鬼をも今の代の世間の人々の疫病をも、日蓮が方のやみしぬをも心うべし。されば身をすてヽ信ぜん人々はやまぬへんもあるべし。又やむともたすかるへんもあるべし」と仰せであり、善鬼悪鬼により世間の人々を悩ます疫病の災禍によって、たとえ末法の正法を受持信行していても疫病に罹患することもあるなか、いかに信心強盛にして疫病を排除することができるか、万が一罹患したとしてもその信心によって疫病を乗り越えるか否かは、その信心によるものと仰せになられております。ましてや、正法を信ずる方々の中にも、こうした世相の流れに呑まれてしまい、いかに信心を行じていようとも、その信仰姿勢や不信心さ故に、我意我見に執われた信心になったり、世間の人々と同じように貪・瞋・痴の三毒、煩悩の用きに負けてしまい我執を破することができず、世間のあらゆる動きに感化されてしまったりと、怠惰な日常生活や信行の実践が疎かになり、ましてや世間の人々と同じようにコロナ禍によって信心まで自粛してしまって、次第に信仰心や御本尊様への信ずる心を失って行けば、お座なりの信心となり功徳を受けるどころか、返って罰を被る結果となってしまいます。

 ですから、『妙心尼御前御返事』に、「病あれば死ぬべしという事不定なり。又このやまひは仏の御はからひか。そのゆへは浄名経・涅槃経には病ある人、仏になるべきよしとかれて候。病によりて道心はおこり候か」と仰せのように、私たちは皆、如何に余命を宣告されるような大病に冒されても、医師が匙を投げるような状況であろうとも、大聖人様の御金言を確信し、求道の一念を起こして信心を奮い起こし信行増進に努め、大病を乗り越えることができるよう精進し、そこに罪障消滅宿業打開、そして一生成仏に繋がるよう努めるでしょうし、現実にそのような体験、経験を我が身で成した方々も沢山いるかと存じます。ましてや、コロナ禍の今こそ、仏さまのお計らいとして疫病大流行のなか、いよいよ自行化他の信心に奮起して折伏弘通に邁進し、大功徳を享受する時であると拝し、その意とするところをお汲み取り頂く事が肝要であります。

 よって私たちは、『最蓮房御返事』の「法華経の行者は信心に退転無く身に詐親無く、一切法華経に其の身を任せて金言の如く修行せば、慥かに後生は申すに及ばず、今生も息災延命にして勝妙の大果報を得、広宣流布の大願をも成就すべきなり」と御教示を拝しつつ、不自惜身命の精神をもって如何なる時も末法唯一の秘法にして法華経の深義たる南無妙法蓮華経の大法広布への志高く、尊く崇高な信行の実践をもってコロナ禍を乗り越え、与えられた人生を御本尊様から賜る功徳溢れる日々をお送り頂き、今こそ真剣に折伏弘教に邁進すべき時であると達観し、油断怠りなくあらゆる御仏意を賜り、コロナ禍だからこそ末法唯一無二の正法を行ずる者として、映えある人生を送ることが出来うるよう努力精進するべきであります。

 どうか皆様には大聖人様が、『大悪大善御書』に、「大事には小瑞なし、大悪をこれば大善きたる。すでに大謗法国にあり、大正法必ずひろまるべし。各々なにをかなげかせ給ふべき」と仰せのように、新型コロナウイルスの感染拡大は、御本尊様からの私たちへの試練であると意得て、決して怖じず嘆き悲しむことなく、この正法正義が大きく広まり前進し、改めて宗祖日蓮大聖人御聖誕八百年を名実ともお祝い申し上げ、1日も早く慶祝記念登山をさせて頂く事ができるよう、それぞれが意を決して、日々の信行の実践に益々励まれますよう心より御祈り申し上げます。