龍ノ口御難会を迎えて

 本年も9月となり、来月23日(土)午後7時、24日(日)午後2時より奉修されます、本年度宗祖日蓮大聖人御会式法要に向かい、お花作りも始まります。どうか御協力のほど何卒宜しくお願い申し上げます。

 さて、世の中では未だ新型コロナウイルスの感染終熄の目途は立たず、混沌とした日々が過ぎ去っています。

 御法主日如上人猊下は、「今、新型コロナウイルス感染症が爆発的に蔓延し、末法濁悪の世相そのままに騒然とした様相を呈しております。しかし、かくなる時こそ、私どもは改めて『立正安国論』の御聖意を拝し、一意専心、全力を傾注して折伏を断行していかなければならないと思います」と御指南されております。

 その『立正安国論』を拝しますと大聖人様は、「倩(つらつら)微管を傾け聊(いささか)経文を披きたるに、世皆正に背き人悉く悪に帰す。故に善神国を捨てゝ相去り、聖人所を辞して還らず。是を以て魔来たり鬼来たり、災起こり難起こる」と仰せになられておりますように、邪宗謗法の害毒と世の中の諸悪、悪鬼魔神の用きによって起こる災禍は、正法の利剣をもってしか対治できないことをよくよく銘記すべきであります。

 現在、コロナ患者向け病床も満床となり、救急搬送もままならなくなった今、政府や自治体も為す術を無くしたと言っても過言ではありません。このような状況になったからこそ、「国土を安んじて現当を祈らんと欲せば、速やかに情慮を廻らし怱いで対治を加へよ」と大聖人様が仰せのように、私たちはこの状況を御本尊様の御仏意と鑑み、コロナ禍を終熄させるためには、私たちの自行化他による信行倍増の功徳利益を持ってしか、その方途はどこにも無いと覚知し、本年残すところの4ヶ月をいかに過ごすか。ただ毎日、朝夕の勤行唱題を行い、夕方のニュースを見ながら新規感染者数を見て、「今日は何人か」と溜め息をついている場合ではありません。一人ひとりが世情の浄化矯正の断固たる決意を持って、まずは御自身の身口意三業において、大聖人様の御意に適った行業を修することが必要であります。

 そして、こうした時こそ大聖人様は、「汝須く一身の安堵を思はゞ先ず四表の静謐を祈るべきものか」と仰せになられているのであり、自らの安穏なる毎日を築き上げるには、まずお題目を真剣に唱え世の中の安穏を祈り、破邪顕正の信心をより一層住持していくことが肝要であります。

 世の中にはコロナ禍をはじめ、末法唯一無二の正法を知らずに、あらゆる不幸な境涯に陥って、なかなかその苦悩から抜け出せないでいる方々がごまんといるのでありますから、私たちは今こそ、この意をお汲み取り頂き、万事を閣き、まなじりを決して折伏弘教に邁進すべき時を迎えていると達観して頂きたく、願って止みません。

 特に今、各新興宗教は自称何十万、何百万人といった会員数を誇って大風呂敷を広げておりますが、実際そのような会員数ではないのが現実であります。大抵新興宗教はネット社会の今、ネットの内容や閲覧をしたり、信じないよう呼びかけているようですが、コロナ禍の今、世の中の多くの人たちはインターネットを活用しコロナ禍の状況を模索しており、それによって新興宗教の信徒もネット閲覧によって、自身の入信している宗教の邪義たることに気付き退会し始めている話も耳にします。だからこそ、邪宗邪義を破折し、正法正義を大きく顕揚する時を迎えているのであります。

 御先師日顕上人は、「南無妙法蓮華経は、黒闇の世を照らす大光明である。今日の社会は、物質文明が発達したとはいえ、人々が人生を正しい仏法の道理によって考えることは少なく、眼・耳・鼻・舌・身の五欲、ならびに我意邪見を中心とする享楽の追求に多くの人が耽溺している。これに対し、衆生を正しく導くべき宗教、特に仏教の現状は黒闇そのものである。真実をはずれ、または教法を誤り衆生を誑惑する不正の宗教が横行し、衆生にはこれを見抜く力もなく、安易に見過ごしている蕩々たる狂乱黒闇の渦中に捲き込まれている。この仏法の本質に迷う衆生の救済には、名実共の仏種の喚起が必要である。しかし、現今のあらゆる宗教、また仏教に、この実体を示す教法は絶えて存在しない。また、世界は、あらゆる宗教対立による闘争の渦中にあり、まさに闘諍堅固という仏の予言的中を見る。この時、日本に大仏法が出現し、衆生を導く本来の大因縁が存する。すなわち、末法出現の下種本仏日蓮大聖人所顕の大漫荼羅の南無妙法蓮華経が、一切を浄化し、暗闇を照らす大光明である。末法万年の上に、我らはこの広宣流布を確信し、自行化他の妙法実践に進むべきである」と御指南されております。何よりも、まず第一に自行化他の唱題行に徹し、その広大無辺不可思議な功徳利益を持ってして、衆生救済の大道を歩んで行くべきであります。

 今から、百年前の大正10年『宗祖日蓮大聖人御聖誕七百年』の大佳節時は、大正8年から10年にわたり全世界でスペイン風邪が蔓延し、日本でも2380万4673人が感染し、38万8727人の死者が出ました。そうしたなかにもかかわらず、総本山第五十七世日正上人が御当職として、第五十六世日応上人は御隠尊猊下として血脈の不断に備えられ、日応上人は愛知・大阪を巡教されたのち、東都弘教のため、大正8年10月20日に「日蓮正宗法道会」を設立され、日正上人は九州・京阪地方を巡教され、全国各地に布教所が設立されております。

 このように百年前もスペイン風邪が世界的大流行が猛威を奮うなか、日蓮正宗の僧俗は疫病の災禍に決して屈することなく、御法主上人猊下を筆頭にして、ただ偏に宗祖日蓮大聖人様の正法正義の弘教に努められ、破邪顕正の勢いのままに疫病を対治されてきました。

 それから百年経った今、令和の法華講衆たる私たちは、こうした先師先達方の不惜身命のお姿を鑑とし、その御功績を汚すこと無く、一意専心広布大願乃至コロナ禍の終熄に向かい精進の誠を尽くして頂きたいと存じます。

 そして、私たちが折伏弘教のため、自行化他のお題目を唱える時、その一心一念が法界に通じ、ありとあらゆる仏縁が結ばれることを確信し、必ず折伏の良縁が眼前に出現することを信じ、今月は宗祖日蓮大聖人の発迹顕本、すなわち上行菩薩の再誕の迹を払い、末法乃至久遠元初の御本仏様としての本地を顕かにされた龍ノ口法難の月でもあります。皆様方御自身も、命の奥底に秘沈する仏性を大きく開かしめて、値い難き正法に巡り会えた因縁の意味を深く拝して頂きたく願います。

 どうか、このような月を迎え、本年も残すところ4ヶ月、コロナ禍終熄のためにも、世の中のあるとあらゆる悩める方々のためにも、最後の最後まで全力を傾注して、百年に一度の大佳節たる宗祖日蓮大聖人御聖誕八百年の大佳節を名実共に寿ぐためにも、そしてこの大慶事に花を添えるべく大聖人様への報恩感謝の念を折伏弘教に転じて、悔いを万代に残すこと無きよう、講中異体同心して一人でも多くの方をこの正法に帰依せしめ、真の幸福に誘うことができるよう精進して参りましょう。