コロナ禍での信心⑤

 御先師日顕上人御教示の『すべては唱題から』の『一、題目の大利益』に、「本門の本尊を信じて、真剣に強盛に題目を唱えるところ、実に不可思議な大利益が生ずる。『祈祷抄』に、「大地はさゝばはづるとも、虚空をつなぐ者はありとも、潮のみちひぬ事はありとも、日は西より出づるとも、法華経の行者の祈りのかなはぬ事はあるべからず」との御指南がある。この御文をそのまま行じ、実践して、想像もつかない大利益を受けた人々は数えきれないのである。医師より余命三カ月と宣告された人が、真剣な唱題で快復したことや、あらゆる医師が手を上げる難病を救われた人々、さらに大事故による後遺症が完治した等々の功徳体験は、その跡を絶たない。そのほか、「妙とは不可思議」と言われるように、ありえないほど不可思議な利益が続出している。これは大御本尊の功徳が法界に遍満し、その真理が虚空に通じているから、題目を真剣に唱えるとき、その人の命に功徳が冥合するのである。人の命は本来、不可思議である。しかし、題目を知らなければ、その命が不可思議の功徳を生じない。謗法によって悪業が生じ、悪業によって苦が生ずる。あらゆる身体の不調も、医師も望みを絶つ難病も、知らず知らずに過去に犯した法に背く罪によっている。その流れのままでは、あくまで苦のなかの命である。妙法を行ずるとき、その苦の命が一転して不可思議な功徳を生ずる。これを信じて病苦の人、あらゆる苦しみに悩む人は、強盛に唱題をされたいものである」とあります。

 日顕上人は「かぎりなく境涯ひらく題目を常にとなえつ広布目指さん」と御歌をお詠みのように、常日頃から唱題行の大切さを御教示されてきました。どうか、コロナ禍の今、今一度初心に立ち返り、是非とも『すべては唱題から』を拝読して、改めて唱題行の大切さとその力用を意得て頂きたく願います。

 さて、今月は盂蘭盆会の月であります。既に自分自身で仏道修行の徳を積むことが出来ない亡き菩提への追善供養は、お塔婆を建立して皆さまが御本尊様へ唱えるところの読経・唱題の功徳が、建立されたお塔婆を通じて御本尊様の御徳を送り届けることができる唯一の方途であり、私たちが行ずべき仏道修行の一つでもあります。それだけ、御本尊様のお力と皆さまが唱え奉るところのお題目のお力が、広大無辺にして不可思議偉大なることを確信して頂きたく存じます。

 この一遍一遍のお題目のお力につきまして大聖人様は、「妙法蓮華経の五字を唱ふる功徳莫大なり」、「妙法蓮華経と唱ふる時心性の如来顕はる。耳にふれし類は無量阿僧祇刧の罪を滅す。一念も随喜する時即身成仏す。縦ひ信ぜずとも種と成り熟と成り必ず之に依って成仏す」と仰せであります。今世の中は、コロナ禍という未曽有の大きな障魔の用きが猛威を奮っております。そうした中で、私たち一人一人にもその障魔の用きが競い起こることは言うまでもありません。ですからこそ、常日頃から時間を設けて唱題行を行う必要性、そしてその唱題行の功徳利益をもって、いざという時御本尊様の御冥加と諸天の御加護を賜ることができるように、そしてこの妙法の功徳がいかに人智を超越する不可思議偉大なるものであるかを実感して頂きたく願います。

 また、念のため申し上げますが、日顕上人の御指南に「例えば病気になったとして、すべてを信心で克服しようとするのではなく、医者にかかる必要があったら医者に診てもらい、服薬する薬があったなら服薬をしつつ、お題目の力をもって、その力用を持って乗り越えなさい」とのお言葉もあります。今、新型コロナウイルスに対するワクチン接種が行われておりますが、任意でありますしその副反応も心配なところであり、更にお体の状況によって全ての方が接種出来うるものでもありません。しかし、各国共通でワクチンの効果が発揮されているのも事実であります。ですから、あくまでもそうした意味を踏まえた上で、ワクチン接種や基本的な感染予防を講じながらコロナ禍を乗り越えて頂きたく存じます。

 世の中では「理外の理」という言葉があり「普通の道理や常識では説明のできない、不思議な道理」を意味します。正に日蓮正宗における信心には、実際「理外の理」を体現、実現することができるだけの不可思議な結果をもたらすお力が具わっています。そして大聖人様が、「日蓮いかなる不思議にてや候らん、竜樹・天親等、天台・妙楽等だにも顕はし給はざる大曼荼羅を、末法二百余年の比(ころ)、はじめて法華弘通のはたじるしとして顕はし奉るなり。是全く日蓮が自作にあらず、多宝塔中の大牟尼世尊・分身の諸仏のすりかたぎたる本尊なり」、「此の御本尊も只信心の二字にをさまれり。以信得入とは是なり。日蓮が弟子檀那等「正直捨方便」「不受余経一偈」と無二に信ずる故によて、此の御本尊の宝塔の中へ入るべきなり。たのもしたのもし。如何にも後生をたしなみ給ふべし、たしなみ給ふべし。穴賢。南無妙法蓮華経とばかり唱へて仏になるべき事尤も大切なり。信心の厚薄によるべきなり。仏法の根本は信を以て源とす」、「一度妙法蓮華経と唱ふれば、一切の仏・一切の法・一切の菩薩・一切の声聞・一切の梵王・帝釈・閻魔法王・日月・衆星・天神・地神・乃至地獄・餓鬼・畜生・修羅・人天・一切衆生の心中の仏性を唯一音に喚び顕はし奉る功徳無量無辺なり。我が己心の妙法蓮華経を本尊とあがめ奉りて、我が己心中の仏性、南無妙法蓮華経とよびよばれて顕はれ給ふ処を仏とは云ふなり」と仰せであります。

 要するに宗祖日蓮大聖人様の出世の本懐として、更に末法尽未来際に亘る私たちが信じ拝し奉るべき本門戒壇の大御本尊様を建立遊ばされ、混迷を極める令和の今日、私たちは、我が心中の奥底に存する仏界の生命、仏性を呼び起こすことが出来うるのは、ただただこの御本尊様に尽きるのであります。そして、御本尊様に無二無三にお題目を唱え、御本尊様にお認(したた)めの諸天善神の御加護を蒙るためにも、また「理外の理」を実証すべく倦まず弛まず皆さまの御信心の功徳利益を以て、コロナ禍を乗り越えることができるよう、また有り難くも第六十六世日達上人御認めの妙眞寺本堂御安置の御本尊様には、脇書に「授与之 本地山妙眞寺安置 願主 廣生房日弘外信徒一同」と御認め頂いております。御本尊様に「信徒一同」と御認め頂いているとは何と有り難いことでありましょうか。正に万代に亘る妙眞寺信徒の帰命依止の道場御安置の御本尊様に、皆さま御信徒の御名が刻まれるていると拝し奉り、現在はコロナ禍のため思うように寺院参詣できない状況にあると存じますが、こうした有り難き妙眞寺の檀信徒として、足繁く寺院に参詣し御本尊様に妙法唱題申し上げ、万代に亘って皆さま方が御本尊様の功徳利益に浴し、一切の障礙障魔を退け、諸難困難を克服し、幸福なる人生を構築する為にも、そしてより妙眞寺が興隆発展するよう、今こそ御精進の誠を尽くして頂きたく存じます。

 今月来月はお盆、お彼岸の月として、また十月は宗祖日蓮大聖人様に御報恩感謝申し上げる御会式法要を控えております。どうか、宗祖日蓮大聖人御聖誕八百年の大佳節である本年、私たちの幸福なる人生や成仏得道を妨げる、あらゆる万難を排し成仏の大直道を修して頂きたく存じます。