御報恩御講(令和3年5月)
令和3年5月度 御報恩御講
『妙心尼御前御返事』 建治元年8月16日 54歳
浄 名 経(じょうみょうきょう)・涅槃経(ねはんぎょう)には病あ(やまい)る人(ひと)、仏に(ほとけ)なるべきよしとかれて候(そうろう)。病に(やまい)よりて道心(どうしん)はおこり候か(そうろう)。又(また)一切(いっさい)の病の(やまい)中(なか)には五逆罪(ごぎゃくざい)と一闡提(いっせんだい)と謗法(ほうぼう)をこそ、おもき病と(やまい)は仏は(ほとけ)いた(傷)ませ給(たま)へ。今(いま)の日(に)本(ほん)国(ごく)の人(ひと)は一人(いちにん)もなく極大(ごくだい)重 病(じゅうびょう)あり、所謂(いわゆる)大謗法(だいほうぼう)の重 病(じゅうびょう)なり。
(御書900㌻12行目~14行目)
【通釈】浄名経や涅槃経には、病のある人は仏になることができる旨が説かれている。病によって道心(信心)がおこるゆえである。また一切の病の中で、五逆罪と一闡提と謗法こそが重い病であると仏は心をいためられている。今の日本国の人は一人も漏れることなく極大重病である。いわゆる大謗法という重病である。
【拝読のポイント】
〇病によりて道心は起こる
誰しも、生老病死などの種々の苦難を避けることはできません。一つひとつの苦難に対してただ悲観しているだけでは、その状況を打開することも、また克服することもできません。種々の苦難とどのように向き合い、乗り越えていくかによって、その後の人生は大きく左右されるのです。
拝読の御文に「病によりて道心はおこり候か」と、私達は病気によって道心を奮い起こすことができると教示されています。したがって、病はただ単に不幸なことではなく、むしろ罪障消滅と変毒為薬の好機と受け止め、成仏の大願を成就するため仏道修行に一層励んでいくことが大事であり、このことからも、拝読御文の直前に「やまひは仏の御はからひか」(御書900)と仰せなのです。もとより、私達の命は三世に亘っているのですから、死を恐れず、どのような大病であっても泰然として受け止め、今は未来永劫に亘る功徳善根を積む時であると心得て、自身はもとより家族・親族一同の信心までも共どもに高めていくことが大切です。
〇謗法の極大重病から救う折伏の実践を
本抄に、世間の全ての人は「大謗法の重病」にかかっていると教示されています。しかしこの謗法という「極大重病」は、拝読御文の後段に「あまりに病おもきゆへに、我が身にもおぼへず人もしらぬ病なり」(御書900)と仰せられるように、それに気付くことがきわめて難しいのです。また、謗法について『呵責謗法滅罪抄』に、「謗法は(中略)始めは緩やかに後漸々に大事なり」(同711)と示されているように、初めは無事なように見えても、気付いた時には取り返しのつかない大きな不幸が我が身を襲うことになります。これが謗法の害毒の恐ろしさです。
この重病を救う道は、大聖人が「南無妙法蓮華経は師子吼の如し。いかなる病さはりをなすべきや」(経王殿御返事・同685)と仰せのお題目を、自らが唱え、また他の人にも唱えさせてあげるという、自行化他の信心の実践にあります。そのためにも、私達は本年の支部折伏誓願目標の完遂を目指し、折伏と育成に励むところに大聖人の弟子檀那としての信行があると肝に銘じ、さらなる広布前進のため精進致しましょう。
○日如上人御指南
謗法の害毒によって苦しんでいる人達を見て、折伏もせず、謗法を責めようともしなければ、大聖人様の御本意に違うことになり、正しい信心の実践とはならないのであります。大聖人様の教えのままに、正しい信心の道に連なってこそ、一生成仏も初めてかなうのであります。
(大日蓮・令和2年1月号)
□まとめ
現在もコロナ禍による不安が続いていますが、大聖人は「妙とは蘇生の義なり。蘇生と申すはよみがへる義なり」(法華題目抄・御書360)と示され、また「やまいある人は、法華経をくやうすれば身のやまいうすれ、いろまさり、ちからつき」(上野殿御返事・同751)とも仰せられて、妙法の絶大な功徳を示されています。私達はこうした御金言を身に体し、大聖人御聖誕八百年を迎えた今こそ、互いに新たな出発を期して、どこまでも本門戒壇の大御本尊への絶対信を堅持し、唯授一人の血脈御所持の御法主上人猊下の御指南のまま、力強く広布の大道を歩んでまいりましょう。
□住職より
東京都におきましては、4月25日より緊急事態宣言が発令され、小池都知事は特に大型連休中、都県境を越境しないよう東京都民に強く要請されていたにもかかわらず、メディアでは東京都内から他県の大型商業施設や都内では営業休止となっている施設を他県に求め、多くの都民が大移動しているニュースが放映されておりました。更に、この期間を利用して旅行へ行く方々なども多々いたようで、もはや政府の緊急事態宣言も「机上の空論」になりつつあります。当然、東京都民の大半の方々が自粛生活を続けられ、不要不急の外出は避けられていることと存じますが、一部のこうした自粛要請を悉く無視しし、モラルに反する行動をとられる方々には憤りを越え、寧ろ憐れみを感じるところであります。更に、本来決してあってはならない医療従事者に対する差別発言や差別行動、コロナ禍による子供たちの精神衛生上の問題も深刻化してきており、この国の現状を非常に危惧するところであります。
最近、新型コロナウイルスに感染された方の闘病記を拝しましたが、闘病中に、「もう自分はこのまま死んでいくのか」、「まさかコロナがこんなに苦しいものだったのか」という新型コロナウイルスに感染し発症した時の状況と共に、「後遺症が非常に辛いこと」、「まさか自分が感染するとは思いもしなかった」、「ただの風邪の重い症状であると思っていた」、「若さを過信していた」との後悔の念を述べられていました。更に現在は、若年層でも重症化しやすく、ワクチン接種をしても感染発症する可能性を持った変異株の感染増加など、新型コロナウイルスは世の中の人々をあざ笑うかのように、その猛威を増しております。どうか、少なくとも世の中の方々1人ひとりが自覚と責任をもって、予防すべき措置をとり、守るべきことを守り、寝る間も割いて感染者の治療に当たられている医療従事者の方々への畏敬の念を持って頂きたく願います。
そして、建長5年4月28日に立宗宣言遊ばされて以来、疫病や自然災害はもとより、度重なる数々の法難を乗り越えられ、ただ偏に一天四海妙法広布を願われ、大法弘通に尽くされてきた末法の御本仏・宗祖日蓮大聖人様をはじめ、その伝統法義を護ってこられた時の御法主上人や、熱原三烈士をはじめとする、ありとあらゆる先師先達方に対する報恩感謝の念を持ち、今こそ世情の浄化矯正の為にも、コロナ禍の終息の為にも、いよいよ日蓮正宗僧俗が挙宗一致異体同心して、弛まざる信行の実践に励むべき時を迎えております。
そして、私たち妙眞寺檀信徒の皆さまにおかれましては、他支部信徒の皆様の御精進の姿に遅れをとることなく、本年も必ず折伏誓願目標は最低でも完遂成就し、1人でも多くの方々がこの正法正義に帰依せられ、現在のコロナ禍における不安や苦悩と不幸を打ち破り、明るく前向きに喜び溢れる日々を送ることができるよう、そしてこうした時を契機に、真の幸福なる人生を構築することができるよう、コロナ禍に恐れるばかりで、信心まで自粛することのないよう、出来る限りの信行の実践に励み、互いにコロナ禍を乗り越えて参りましょう。
そして、このコロナ禍を打破し早期に終熄させる為にも、不可思議偉大にして広大無辺なる仏さまの有り難き御仏意と、諸天の尊い御加護を必ず賜ることを固く信じ、その来たるべき日を1日も早く迎えることができるよう、共々精進して参ろうではありませんか。