年度末を迎え新年度を控えて

 先月の宗祖日蓮大聖人御聖誕八百年慶祝記念法要には、コロナ禍のなか平日にもかかわらず、多くの方の御参詣を賜り、特に幼稚園児、小中学生、高校生、大学生の皆さんには、下校後の貴重な時間を割いて深信の参詣を賜り、誠に有り難く存じ上げます。また御尽力頂きました親御様にも謹んで御礼申し上げます。

 いよいよ年度末を迎え、桜が咲き始める頃には若葉会の子供達もそれぞれ進級、進学することと存じ、大変お目出たく、いよいよ信心強盛に有意義な学生生活を送って頂きたく願います。そのためには、何よりも子供達が主体性をもって、勉学やスポーツ、部活動、学生時代にしかできない物事に積極的に取り組み、将来自分自身が進むべき道を見据えた道程を進めるよう、親御様方には子供の意見も尊重しつつ、適宜なアドバイスをするなど、親としての責務を果たして頂きたく存じます。

 現在新型コロナウイルスの感染拡大も続いているところであり、最近では大地震や大火事など、全国各地で自然災害などが頻発しております。特に疫病の災禍や自然災害等は、私たち一切衆生の因果応報、依正不二の厳然たる姿、そして御本尊様の御仏意そのものと拝することが大切であります。

 私たちは今、過去からの因縁宿習によって、この時代を生きるべくして生きているのであり、こうした災禍を乗り越えるか否かは、当然私たちの信心如何(いかん)によって大きく変わってきます。ただ漠然と世の中の人々と同じように、毎日のメディアの情報に惑わされ一喜一憂しながら過ごすか、はたまたこうした時こそ、唱題に唱題を重ね福徳増進して、決して臆することなく功徳利益に充ち満ちた生活の礎を築くかは、皆さんの御信心次第であります。また、私たちが一生を送るなかで、自分自身が悩んだり困ったりする時もあると思いますし、こうした疫病や自然災害の災禍によって不自由な生活を余儀なくされる時もあります。しかし、私たちはどこまでも謙虚に嘘偽りのない正直な信心を貫くことによって、必ず御本尊様や諸天善神の御加護があることを信じ、やるべき事をやるべき時により真剣に行ずることが肝要であります。

 そして率先垂範して折伏に打って出て、「疫病の災禍の原因、自然災害の原因が私たち人間の、新興宗教をはじめ時代にそぐわない誤った信仰や自己中心的な身口意の三業、勘違い甚だしい価値観によって起きる悪しき心根によって起こるところの災いであり、こうした乱世を正しく前向きに力強く生き抜くには、正しい信行の実践によって初めて出来うること」を、しっかりと弘め伝え、多くの方々と共に令和の大災難をいかに乗り越えるかが、皆様の今後の未来を大きく左右する大きな分岐点であると捉えて頂きたく存じます。そして、御本尊様は私たちにいよいよ勇猛果敢に信行の実践に励んでいくことを臨んでいると肝に銘じて、「やる気・動き・根気」の三つの木を持ち、混沌とした令和のこの時に相応しい毎日の生活をお送り頂けることを願って止みません。

 総本山第二十六世日寛上人は『六巻抄』の『当流行事抄 第五』に、「大覚世尊設教の元意は、一切衆生をして修行せしめんが為なり」と仰せであります。すなわち私たちの一生成仏の境界も、有意義且つ価値ある人生を送るにも、正しい仏道修行をしてこそ初めてなさしめるものであり、仏さまは私たちに対し三毒煩悩によって汚れた身心を仏道修行の実践によって浄化矯正し、世の中を平和安穏ならしめんと、衆生を教化されてきたのであります。しかし、修行するにもその教えが正しくなければ、何の意味も成さなくなってしまいます。更に日寛上人は同抄に、「行者応に知るべし、受け難きを受け値い難きに値う、曇華にも超え浮木にも勝れり。一生空しく過ごさば万刧必ず悔いん、身命を惜しまずして須く信行を励むべし。『円頂方袍にして懶惰懈怠の者は是れ我が弟子に非ず、即ち外道の弟子なり』と云云。慎むべし慎むべし、勤めよや勤めよや」と仰せであります。

 今私たちは、有り難くも人として生を受け、値い難き正法正義に巡り値うことが適い、更に宗祖日蓮大聖人御聖誕八百年という百年に一度の大佳節を迎えることができました。この大佳節に当たり、私たちは今まで以上に大聖人様への御恩徳に報いる為にも、コロナ禍という大きな障礙が立ちはだかり様々な自粛生活を余儀なくされているなか、己の信心まで自粛することのないよう、皆さんが今まで経験したり耳にした信心の体験を思い返し、不可思議偉大なる御本尊様の御照覧を再確信し、今後新型コロナウイルスの感染が終熄した時、決して後悔の念を懐くことがないよう、世界中が混沌としているこの時こそ、信行倍増して大きな功徳利益を積んで参りましょう。

 最後に、日蓮正宗の僧俗だといっても、身近に新型コロナウイルスの脅威が迫り潜んでいることを覚知し、油断すれば世間の方々同様に感染の可能性大なることを忘れず、まずは世間でいうところの予防措置をとった上で、いよいよ精進の誠を尽くして頂きたく存じます。