12月度広布唱題会を終えて

 本日、令和2年最後の広布唱題会を終えました。皆様方一人ひとりがそれぞれ、様々な思いを込めて唱題されたことと思います。どうか、その功徳利益をもって、新型コロナウイルス他、万難を排して残りの日々を折伏弘教はもとより1日1日を有意義に過ごされ、無事大晦日をお迎え頂きたく存じます。

 さて、この唱題という修行は、御本尊様と私たちの命が一体不二となり成仏の境界に至らしめて頂ける、最高最善尚且つ基本的な信心修行の一つであります。私たち日蓮正宗の僧俗における仏道修行は、他にも毎日の朝夕の勤行、御本尊様への身・法・財の御供養、先祖菩提の塔婆供養、総本山への御登山、菩提寺への参詣、そして折伏行と多岐に亘りますが、特に毎日の勤行・唱題は最も欠かせない修行であり、この修行による功徳利益をもって毎日を有意義に、そして所願成就、罪障消滅・宿業打開、折伏成就へと繋げるべく、全身全霊をもって行う大事な修行であります。

 宗祖日蓮大聖人さまは、「法華経を余人のよみ候は、口ばかりことばばかりはよめども心はよまず、心はよめども身によまず、色心二法共にあそばされたるこそ貴く候へ」と仰せであります。要するにこの勤行・唱題は、色心二法すなわち身心一体となって行う修行であり、心と身の鍛練にもなっていくのであります。特に唱題行において、例えば1時間、2時間と行っていく中で、正座をして行うと足がしびれたり痛くなったりして落ち着かなくなったり、また、真剣に行おうとも余念雑念が出てきたりすることがあると思います。しかし、これらを克服し万感の思いを込め、全身全霊を以て集中して行えるようになってくると、自然と普段から何事にも集中することができ、世間の雑踏に潜む障魔や垢を見破り払い除け、万事しかるべき道へと進み、大きく境涯を開くきっかけになってくるのであります。

 また、そうした信行実践の姿をしっかりと自身の命に深く刻み込むことも大事なことであります。例えばこのような話があります。本年は東京第二布教区管内各末寺において、新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドラインに則り、宗祖日蓮大聖人御会式法要が奉修されましたが、ほとんどの寺院にてその収容人数の関係から数回に分けて奉修されました。そして、ある寺院の御住職様に、今年は組寺の御住職様方がお見えになる御正當法要を含め、御逮夜法要と3回の御正當法要を行うので、計4回の御会式法要にお手伝い頂きたい旨御依頼を受け、お手伝いさせて頂きました。その最初の法要として、御逮夜法要に出向いた際の話ですが、御信徒方が法要の打ち合わせをしていた際、太鼓は誰が叩くかを決めていたところ、ある女子高生が頼まれていました。その子は東京第二地方部鼓笛隊出身で現在は鼓笛隊スタッフをされており、非常に信心強盛な御一家の次女でした。しかし「最近叩いていない」ということで、あまり自信がないようでしたが、いざ法要の際その子が叩く太鼓は、すばらしい力強さとリズムが良く、太鼓に合わせ唱題していて大変心地よいものでした。

 その姿を見まして、この子はすでに命の中に正しい太鼓の叩き方というものが刻み込まれており、たとえ長い間叩いてなくても、いざとなるとその時に応じて、命の奥底から湧き上がってくるものであると感じた次第であります。やはり、信心とは色心二法、別して言えば、身口意の三業で行ずるものであります。よく「身口意の三業相応の信心」とも言いますが、しっかりと志して行ずること、決して姿形ばかりのお座なりの信行であっては、功徳利益は思うように積まれず、逆に世間の垢にまみれ、法華経如来寿量品第十六の経文に説かれる「徳薄垢重者」の境界になってしまいます。このことからも、命の奥底に刻み込むような強い志をもって、信心を行ずることが大事大切であり、またそうでなければならないと思います。

 ましてや今、世の中は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、世の中の人々は戦々恐々とし、それによって仕事を失ったり精神を患ったり、将又感染してしまったりと、正に邪宗謗法の害毒や世間の悪心盛んなることによって起こるところの災禍たる、この疫病の蔓延が益々勢いを増している今日であります。しかし、皆様が毎日朝夕の勤行で読誦している、法華経如来寿量品第十六の御経文には、「是好良薬 今留在此 汝可取服 勿憂不差【是(こ)の良き良薬(ろうやく)を、今留(とど)めて此(ここ)に在(お)く。汝(なんじ)取って服すべし。差(い)えじと憂(うれ)うること勿(なか)れ】」とあります。この御文について大聖人様は『御義口伝』に、「是好良薬とは、或は経教、或は舎利なり。さて末法にては南無妙法蓮華経なり。是とは即ち五重玄義なり。好とは三世の諸仏の好み物は題目の五字なり、今留とは末法なり、此とは一閻浮提の中には日本国なり、汝とは末法の一切衆生なり、取とは法華経を受持する時の儀式なり、服とは唱へ奉る事なり。服するにより無作の三身なり、始成正覚の病患差ゆるなり。今日蓮等の類南無妙法蓮華経と唱へ奉るは是なり」と仰せであります。

 要するに、こうした末法における疫病の災禍や、ありとあらゆる苦悩に苛まれる人々を治する唯一最高の良薬は、私たちが南無妙法蓮華経をお題目を唱えるところに存すると御教示されております。よって私たちはこの御指南を拝し奉り、自らはもちろんのこと、世のため人のため、是(こ)の好(よ)き良薬を一人でも多くの方々が服され、新型コロナウイルスの感染拡大を終熄させるためにも、この南無妙法蓮華経の尊い御教えを説かれた宗祖日蓮大聖人様の御聖誕八百年の大佳節を目前に控えた今、私たちが成すべきことはただ一つ、妙法広布に尽きるのみであります。

 また、この良薬を服しても病が差(い)えないと憂い嘆くことがないよう、真剣に信行の実践に励んで身口意の三業相応の信心を行ずることができるよう、本年の残すところ20日余り、また2ヶ月後に迫った令和3年2月16日の宗祖日蓮大聖人御聖誕八百年の佳き日を迎えるに当たり、いよいよ不撓不屈の信心に徹し、油断怠りなき強盛な志のもと信行の実践に励み、もってその大佳節を盛大に報恩感謝し寿ぎ奉ることができますよう、更なる御精進と御健勝を心よりお祈り申し上げます。