精神性(スピリチュアル)ブームに思う
近年、スピリチュアルブームとやらで、人の前世、霊魂(れいこん)などに関心が集まるようです。
私が住職をさせて頂いているお寺でも、檀家の方々から質問を受ける事が何度かありました。
「お坊さん、あのテレビ番組でやってるやつね、本当かね、インチキかね?」という具合です。
私は実際にその出演者を知らないのですから、断定的な事は言えません。
けれども、仏教では、人間は輪廻生死(りんねしょうじ)を繰り返す存在で、それを前提として仏の法も説かれているのですから、「必ずしもインチキとは言えないでしょう」とお答えしています。
仏教には「十二因縁(じゅうにいんねん)」と呼ばれる教えがあり、明確に人の輪廻(りんね)を明かしています。(詳細は略)
更に、末法の御(ご)本仏(ほんぶつ)・日蓮大聖人様もそれを肯定し、御信徒にも教示されておりますから、「人に過去世があり、現世を生き終えても、来世がある」ことは間違いないのです。
只、仮にそれを見る能力を持った人がいたとしても、個人的に過去世の姿を教えたり、その前提でアドバイスを与えたり、そんな事が必要だとは思えないのです。
日蓮大聖人様は『開目抄(かいもくしょう)』という御著述の中で、『心地観経(しんちかんぎょう)』を引用して、「過去の因(いん)を知らんと欲(ほっ)せば、其(そ)の現在の果を見よ。未来の果を知らんと欲せば、其の現在の因を見よ」(御書五七一頁)と示されています。
既(すで)に終わってしまった過去世の出来事を悔やんでも、過去を消すことはできません。
過去にどんな罪があろうと、福徳があろうと、あなたは今ここにしかいない、今がすべて、今、目の前の生に全力で向かうべし、との仏の言葉と拝されます。
もし、人が正法(しょうぼう)を信受(しんじゅ)し、今生(こんじょう)を喜んで生きるなら、過去からのいかなる罪も消滅する事が可能です。来世を思い患(わずら)う必要もありません。今の生き方こそが次の道を定めるからです。
件(くだん)のテレビ番組は、この線からは、ややハズれ、人を過去の行跡(ぎょうせき)に執着(しゅうじゃく)させる可能性が大です。
「そうか、私は過去にそんなに善い事をしたか、ならば今世は少々我がままで良い」とか、逆に「そんなに重い罪を負っているなら、今の世で幸福には、なれない」とか。どちらも仏の心から離れていくものです。
大切なのは、今、現実を生きている私たちが、どのように振る舞うのか、何をするのかということです。もしあなたが現在・未来をよりよく生きたいと願うならば、悪い行いをやめて、最善の正しい仏法に帰依すべきです。どうぞ、日蓮正宗の寺院をお訪ね下
さい。