未来を変えよう(平成30年4月)

みなさんは、映画や小説で、災害や事故などの不幸な出来事を変えるために、主人公が過去にタイムスリップするという話を見たり、読んだりしたことはありますか。

こうした映画や小説の話をSF(サイエンス・フィクション)とよばれ、世界中でむかしからたくさん作られてきました。

 

私たちの心の中には「過去にもどってやり直したい」、「あの時、こうしていれば…」などという願望があるかもしれません。

しかし、残念ながら私たちは過去に戻ったり、1度行ったこと、言ったことを変えることはできません。

 

「覆水盆に返らず(ふくすいぼんにかえらず)」という、ことわざがあります。

これは、中国の周(しゅう)という国の軍師で、のちに斉(せい)という国の国王となった太公望(たいこうぼう)という人の話にあります。

その太公望が周の国王に仕える前は、ろくに働かず、読書ばっかりしていたので、妻である馬氏(ばし)は愛想を尽かして自分の両親がいる実家に帰ってしまいました。

 

しかし、その後太公望が周国の軍師として国王に仕える身となり、大変な出世をした話を耳にした馬氏は、太公望と再び夫婦になりたいと願ってきました。

太公望はお盆の中に溜めた水を地面にこぼして、「この水を元のようにお盆に戻せたら、お前の望むように再び夫婦となろう」と言いました。

馬氏は、当然こぼれた水をすくうことができません。

太公望は、「1度こぼした水は2度とお盆に戻せないのと同じように、1度別れたお前とは復縁できない」と言って馬氏に断りました。

この話から、1度行ってしまった失敗は、決して取り返しがつかないことを「覆水盆に返らず」と言うようになりました。

 

 

仏さまの教えでは、私たちは過去世から積み重ねてきた行為(業)によって、現在の境遇に生まれ変わると教えられています。

日蓮大聖人さまは、「烏の色が黒いのも、鷺の色が白いのも、過去世の業によって染まるのである」と仰せられています。

このように、私たちが一人ひとり、容姿や才能、境遇がそれぞれ異なり、人間や動物、どこの国に生まれ、どのような親のもとに生まれてくるのか、また、どのような人生を送るかは、すべて自分の過去世の業によっています。

 

それでは、過去に行ってきたことを変えることはできませんから、私たちのは自分の業をどうすることもできないのでしょうか。

 

大聖人さまは「心地観経(しんちかんきょう)には『過去の原因が知りたければ、現在の結果を見なさい。未来の果報が知りたければ、現在の原因を見なさい』と説かれている」と仰せられています。

つまり、現在の自分の状況は、過去にしてきた行いの結果であり、また現在の自分の行動によって未来の結果が決まる、ということです。

私たちは過去に戻ったり、1度してしまったことを消すことはできませんから、現在、そしてこれからの自分の行動によって、未来を変えていくことができるのです。

 

お釈迦さまのお経典に次のような話があります。

「世の中には四種類の人がいる。闇から闇へ歩む人、闇から光へ歩む人、光から闇へ歩む人、光から光へ歩む人である。闇から闇へ歩む人は、恵まれない環境に生まれ、人生で悪い行いをして、死後悪いところへ行く人である。

闇から光へ歩む人とは、恵まれない環境に生まれても、人生で善い行いをして、死後善いところへ行くひとである。

光から闇へ歩む人とは、恵まれた環境に生まれながら、人生で悪い行いをして、死後悪いところへ行く人である。

光から光へ歩む人とは、恵まれた環境に生まれ、人生で善い行いをして、死後善いところへ行く人である」

というお話で、人の生まれた環境は様々であっても、人生における行いによって、それぞれの未来、行き先が異なることを教えています。

また、たとえ過去世の業によって、大変な環境に生まれた人であっても、人生のなかで善い行いを積み重ねれば、善い未来に向かって歩むことができる、ということです。

 

私たちが毎日拝んでいる御本尊さまには、「為現当二世(いげんとうにせ)」としたためられています。

「現当二世」とは、現在世と当来世(とうらいせ・未来世)のことをいいます。

つまり、日蓮大聖人さまは、今の時代の人々が現在世と未来世にわたって成仏し、最高の幸せを得ることができるように、本門戒壇(ほんもんかいだん)の大御本尊さまを顕(あらわ)されました。

大聖人さまは、「過去に悪い行いをしたことによって受けることが決まっている悪い果報も、よくよく反省して御本尊さまに祈れば消滅することができる」と仰せられています。

つまり、自分の過去の悪い行いによって、すでに悪い結果を受けることが決まっていたとしても、真剣に御本尊さまにお題目を唱えて、悪い原因である罪障の消滅を祈っていけば、御本尊さまの大きな功徳(くどく)、お力によって、その罪障を消滅し不幸の果報を消し去ることができるのです。

 

このように、私たちは御本尊さまを信じて、真剣に勤行・唱題に励み、お寺に通い、総本山に登山して、御開扉に参加させて頂いて、お友達にもこの仏さまの教えは必ず幸せになれる正しい教えであることを伝えていくところに、必ず明るい幸せな未来を切り開いていくことができるのです。

また、何かかなえたい大事な願い事があったり、悩んだり、困ったりすることがある時こそ、御本尊さまにお題目を唱えて、願い事をかなえたり、悩んだり困ったりすることをなくすことができるのです。

 

これから、皆さんは大人への階段を登って、未来に進んで行きますが、毎日の生活の中に、善いこと悪いこと、うれしいこと楽しいこと、イヤなこと辛いことが起きるかもしれません。

ですが、常に前向きに、決してくじけず、少しでも幸せな人生になれるように、物事がすべてうまくいくように、毎日、朝夕の勤行や唱題をしっかり行い、御本尊さまから功徳を頂けるよう頑張って下さい。

また、勉強やクラブ活動もしっかり取り組み、何でも一歩一歩コツコツと続けることができるようになって下さい。

そうしたことを心がけていけば、必ず立派な大人に成長し、幸せな人生を築くことができます。

皆さんが、今年も元気に毎月お寺に来ることを、御本尊さまも待っているでしょう。