赤い魚になった王様(平成26年3月)

むかし、インドのカーシ国にとても慈悲深い王様がいました。

この王様は、いつも人々の幸せを願って政治をしていましたので、この国は戦争もなく、災害もなく、作物も良く実り食べ物に困ることもなく、とてもおだやかで平和でした。

 

そんな平和が続いたある年、国中に原因不明の病気が流行しました。

国王は医者に命じて病気の原因をしらべさせましたが、何もわかりませんでした。
ただ、病気を治す方法だけはみつかりました。

それは深い海に住むという「赤い魚の肉を食べる」ということでした。

 

でも、赤い魚は深い海にしか住んでいないので、ほとんど見た人はいませんし、むかし夏に釣りの名人が釣り上げたことはありましたが、今は冬で釣りができる状況ではありません。

 

医者は王様に「赤い魚さえあれば、この病気を治すことができます」と報告すると、王様は「ほかに方法はないのか?赤い魚は、まぼろしの魚と言われるほど、手に入れるのが難しいそうじゃないか」と言いました。

医者は「はい、王様。いろいろと薬を作ってみましたが、いっこうにききめはありません。もう多くの人が亡くなっています。このままでは、国中の人々が死んでしまいます。赤い魚さえあれば、みんな助かるのですが」と言いました。

 

王様はなんとか国民を救いたいと考えました。

しかし、この寒い冬に赤い魚はなかなかとることができないと、必死に考えた結果、王様は「自分の命とひきかえにみんなを救おう」と決心しました。

王様は王子と大臣を呼んで、自分の決意を言いました。

王子や大臣達はびっくりしました。
「王様、それだけはおやめ下さい。王様がいなくなられると、この国はほろんでしまいます」

「そうか、しかしこの病気が流行してもう半年になる。もうこれ以上人々を死なせてはならない。私は王としての国民を守り、幸せにする責任がある。私は赤い魚に生まれ変わって必ずこの病気を直し、人々を救うのだ。国民の病気は我が病気であり、国民の苦しみは我が苦しみなのだ。王子よ、この国のことはおまえにまかせた。父である私の意思をついで、この国をまもっていくのだ。大臣達よ、あとはよろしくたのむ」と、

王様はそのように言うと、1日中お城の塔にとじこもり、天をあおいで、「赤い魚に生まれ変わりますように」と祈り、つぎの日の朝、お城のがけからバーラーナシーの川に身を投げました。

 

 

すると不思議なことに、次の日、大きな赤い魚が漁師の網にかかりました。

王子や大臣は、さっそく赤い魚を病気にかかって死にそうになっている人々に食べさせました。
すると、みるみる元気になりました。

赤い魚は半分、体が切られた状態で川に戻されました。

ところが、次に日の朝、まるで魚のほうから網にかかったように、赤い魚は網にかかり、しかもその体は元に戻っていて、どこにも傷はありません。

次に日も、その次の日も、それから10年間同じように、半分の体になってしましった赤い魚は、その体が元に戻り網にかかり、ついに国民全員の病気が治り、国は平和な活気のある国に戻りました。

そして病人が一人もいなくなると同時に、赤い魚も川から姿を消してしまいました。

 

役目を終えた魚は、天界に生まれ変わったのです。

国王であった赤い魚は全ての国民を救うために、毎日その身をけずられ、ついにすべての国民の命を救うことができたのでした。

 

皆さんのお父さんや、お母さんは、皆さんが生まれた日から、自分の身をけずる思いで育てます。

そして、日蓮大聖人様は、世の中の全ての人々を救うために、大きな慈しみの心をもって、人を幸せにするために、一生を過ごしました。

 

大聖人様は「世の中の全ての苦しみは、自分の苦しみである」と言われ、南無妙法蓮華経の仏法の教えを全世界に弘めて、今、世の中で苦しんでいる全ての人を救おうと決心されました。

 

私たちも日蓮大聖人様や赤い魚となって人々を救った王様のように、悩んだり、苦しんだり、悲しんだりしているお友達がいたら、少しでも救っていけるように、御本尊様にお題目を唱えお祈りして、行動していきまししょう。

そして、一緒に唱題して、話を聞いてあげてましょう。
それは、世の中の人たちの悩みや苦しみは、御本尊様が全て直してくれるからです。