黒白混交(こくびゃくこんこう)(平成27年3月) 

むかし、中国の後漢(ごかん)時代に活躍した陽震(ようしん)という人がいました。

この人は陝西省(せいせいしょう)の出身でしたので中国関西の孔子(こうし)と言われ、多くの人々から尊敬されていました。

孔子のように清廉潔白(心が清らかで欲が無いこと)で、とても正直者でした。

正直とは心が正しく素直で偽りのないことで、人が見ていても見ていなくても立派なことをしようとします。

 

この陽震が湖北省(こほくしょう)の国司(国の長官)であったころ、王密(おうみつ)という人を昌邑(しょうゆう)という所の県令(けんれい)(県の長官)に任命しました。王密は陽震に礼儀を尽くしとても感謝していました。

ある年、陽震は王密のいる昌邑の近くを視察にきました。
その夜、王密はひそかに陽震の泊まっている宿を訪ねました。

そして、陽震にあいさつし、土地のおみやげと黄金10枚(今のお金で百万円くらい)を差し出しました。

 

ところが陽震は、急に暗く厳しい顔になりました。
「これは何のつもりだ。賄賂かね?私は君のことをよく知っていて県令に任命したのだ。ところが君は私のことをよく知らないようだね。私はこういう不正が大嫌いなのだよ。早くもって帰りたまえ」と陽震が言いました。

しかし王密は
「これは私のほんの感謝の気持ちです。今夜のことは誰も知らないことです。どうぞお受け取り下さい」と言いました。

すると陽震は
「君、誰も見ていなくても真実はかくせないものだよ。天知る、神知る、我知る、汝知る、と言ってね。ゴマカシやウソはいけない。私は自分に恥じるようなことはしたくない。君も潔い正直な生き方をしなさい」と言いました。

王密は深く反省して帰りました。

 

さて、そんなことがあった次の年のことです。
現在の後漢の皇帝・安帝(あんてい)は乳母の恩に報いるために立派な家を建ててあげました。

敷地も広く大きな庭や池もある豪華なお屋敷でした。乳母はその家に、自分の娘とともに住むようになりました。

乳母は安帝に建ててもらった豪華な家で暮らすうちに、だんだん自分が偉くなったような気分になっていきました。また、お役人たちも、乳母に近づき御機嫌をとることで、権力が得られるようになってしまいました。

そして乳母はかげで賄賂を受け取るようになり、だんだん政治にも口をだすようになりました。
乳母にすりよってくる人が重く用いられ、正直な人が田舎の土地に遠ざけられるようになりました。

 

 

陽震はこの不正を怒り、安帝に手紙を出しました。

それには
「後漢の初代皇帝は大臣を登用するには正直に行うべしと仰せられています。本当に功績のあった人のみが登用されるべきです。それなのに今は、功績がないものが賄賂をもって出世しています。

これはちょうど、白と黒を交ぜ合わせたようなものです。
本来、白は善で黒は悪です。白は正義で、黒は不正です。

白は正直で、黒はうそつきです。
白は清浄(しょうじょう)で、黒は濁悪(じょくあく)です。

しかし今は、悪が善であるかのように不正と汚職がまかり通っています」と書かれていました。

 

その手紙をみた安帝はびっくりしました。
信頼していた乳母が多くの役人から賄賂をとって、そんな不正なことをしていたとは思いもしなかったからです。

そして安帝は、不正を行っていた大臣を取り調べ、乳母も取り調べを受けました。

 

黒と白が交じり合っていたものが白黒はっきり分けられ、はっきり区別できるようになりました。

悪いことをする人は、人に見つからなければいいと考えます。
だから汚職がなくなることはありません。

しかし、そういう不正は1回で終わることはなく、だんだん広まっていきます。
そして、社会全体が汚れ、暗くなり、国全体が不幸になっていきます。

そして、不正は必ず明らかになります。

そのことを陽震は、「天知る、神知る、我知る、汝知る」と言って、人に見られていなくても事実は天も神も自分も相手も知っているのだ、と皇帝である安帝を戒めたのでした。

 

日本でこの言葉は『十八史略(じゅうはちしりゃく)』という書物に、「天知る、地知る、我知る、汝知る」と書かれていて有名です。

更に信心をしている私たちは、御本尊様の冥(みょう)の照覧(しょうらん)という言葉を知らなければいけません。

これは、いくら人や自分をごまかしても御本尊様は全てお見通しである、ということです。

 

ですから、私たちは世の中の白黒をはっきりと理解し、行動しなければなりません。

そして、世の中には白である正しい大聖人様の教えと、黒である間違った宗教がたくさんあります。
当然、間違った宗教を信じれば、不幸になってしまいます。

しかし、この白黒の違いを世の中の人はほとんど知りません。

ですから、皆さんは宗教にも白黒があって、間違った黒の宗教を信じると不幸になってしまうことを知り、沢山の友だちにこのことを教えることができるようになりましょう。

そして、いつも御本尊様が御覧になっていることを忘れないようにしましょう。