沙(すな)の餅の供養(平成26年5月)

むかし、お釈迦様がインドのコーサラ国の祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)でお説法をしていた時のことです。

お釈迦様は、須達長者(すだつちょうじゃ)が御供養(ごくよう)した祇園精舎にいて、人々に教えを説いていました。

そして、朝早くから弟子と共に托鉢(たくはつ)をしていました。

托鉢とは、僧侶が行う修行の一つで、器を持って各家をまわって食べ物などをもらうことです。

これは、布施行(ふせぎょう)といって、食べ物などの布施をした人たちが功徳(くどく)をつむことを意味します。

 

ある朝、お釈迦様が弟子の阿難(あなん)をつれて托鉢に出ると、二人の子供が遊んでいました。
子供たちは土をこねていろいろなものを作っていました。

子供たちはお釈迦様を見つけると、大人のまねをして、自分もなにか御供養したいと思いました。
そこで、さっそく土をこねて餅を作りました。

そして、お釈迦様の鉢に入れようとしましたが届きません。
そこで、一緒に遊んでいた友だちがに肩車をしてもらいました。

「お釈迦様、僕も御供養したいのですが、何もありません。土で作ったお餅ですが、この鉢に入れてもよろしいですか?」とたずねると、

お釈迦様は
「ああいいとも、さあこの鉢に入れなさい」と言いました。

この少年の名前は、一人が得勝童子(とくしょうどうじ)、もう一人は無勝童子(むしょうどうじ)と言いました。

 

お釈迦様は弟子の阿難に
「さきほどの子供がくれた土の餅を建物のかべにぬりなさい」と言い、

阿難は
「はい、承知しました。そのようにします」と答えました。

そしてお釈迦様は
「あの子の布施した餅は土だから食べることはできないが、祇園精舎の壁に塗って、建物を立派にすることができた。あの子の真心の供養は、きっと未来世に大きな功徳となって顕れる。それは私の死後百年過ぎればわかるだろう」、

「お師匠さま、百年後どうなるのですか?」

「阿難よ、あの子は百年後、阿育大王(あいくだいおう)と生まれ変わって、仏教を信仰し、私の遺骨を納める八万四千ほどの仏舎利塔(ぶっしゃりとう)を建てるだろう。肩車をした子は、大王の第一の大臣として生まれ、大王を助けることになるだろう」とお釈迦様は言いました。

 

これを聞いた阿難はビックリしました。
「お師匠さま、どうしてお師匠様のお骨を納める仏塔を八万四千も建てるのですか?」

するとお釈迦様は阿難に
「それは、私の前世に関係がある。むかし、八万四千もの国を支配する大王がいた。その時、大王の国にプシュヤという仏様が住んでいた。

大王はとても信仰心の篤い人で、プシュヤをはじめ、多くの僧侶に対して食べ物や着る物など、いろいろなものを御供養していた。

大王は、こうして仏様に御供養し、仕えることをとても有り難く思っていたが、自分だけでなく八万四千の国のすべての人々に、この仏様のことを教えてあげたいと思ったのです。

しかし、遠い国の人々は仏様の姿さえ見ることができない。
そこで大王は、仏様のお姿を絵に描いて、八万四千のすべての国に渡してあげれば、遠くに住んでいる人々も拝むくとができると考えた。

そして多くの絵描きに仏様のお姿を描かせたが、あまりにも仏様は立派すぎて、誰も上手に描けなかった。

ついに、大王の篤い信仰心を知って、プシュヤは自ら自分の姿を描き、その絵は生き生きとして後光が出るほどのすばらしいものだった。

その絵を受け取った大王は、絵描きたちに、仏様が自ら描かれたこの絵を見て、八万四千もの絵を描かせ、それをすべての国の王様に配ったのです。

その絵を頂いた王様たちや人々は、仏様の姿を拝することができて大喜びし、まるで実際に仏様にお会いできたように、その絵に向かって手を合わせ、花や果物などをお供えし、国々はますます栄えていったのです」

と、物語りをお話しし、
「阿難よ、その大王は私の前世であり、そうした善行によって、私は仏になったのである。そして、私の死後百年して、八万四千もの仏塔が建てられ、人々が拝むようになるのは、その因縁によるのである」と言い、

阿難はお釈迦さまがいつも言われる「善因善果(ぜんいんぜんか)、悪因悪果(あくいんあっか)」という言葉の意味と、仏様にお仕えし御供養することの大切さを改めて感じ、より一層仏道修行に励みました。

 

 

さて、この土の餅を御供養した得勝童子は阿育大王に生まれ変わり、肩車をした友達の無勝童子は阿育大王の第一の大臣として生まれ変わり、生涯、阿育大王と共に国を栄えることに努力しました。

阿育大王は、インドのマカダ国のビンバシャラ王の王子として生まれましたが、生まれつき乱暴でした。

王様になっても、最初は自分の好き放題に国を支配したり、回りの国を攻めたりと自分勝手な政治をしていましたが、その王様の姿に頭をなやませていた第一の大臣は、意を決して「自分勝手に政治をしたり、回りの国を攻めて困らせるのは、真の王様ではありません」と注意しました。

すると王様は深く反省し、それからは仏教を信仰し、スリランカやカシミール、ガンダーラなど、外国にも仏教を弘め、国内にもお寺をたくさん建てたりしました。それらは今も東南アジアの各地にその後が残っています。

 

皆さん、このお話では善いことをすれば善いことが起きる、悪いことをすれば悪いことが起きるという「善因善果、悪因悪果」ということ、これは「因果応報(いんがおうほう)」ともいい、自分の行ったことは必ず自分にかえってくるということをいっています。 

また、妙眞寺には日蓮大聖人様の御影(みえい)様が御本尊様の左脇にお供えされています。

これは、鎌倉時代に大聖人様が亡くなった後、大聖人様のお姿を拝することができるように、大聖人様が生きていらっしゃった時代に描かれた絵や御影様をもとに作られたものです。

私たちは直接、仏様である日蓮大聖人様にお会いすることはできませんが、御影様を拝して大聖人様のお姿を拝することができるのです。

そして、得勝童子のように、子供でも真心の御供養をすることは、とても大切なことです。

ですから、お正月に頂くお年玉や、おこづかいから、10円でも、50円でも、100円でも、御本尊様に少しでも真心の御供養をできるようになりましょう。

最後に、今の時代は末法という時代で、末法の時代の仏様は日蓮大聖人様しかいません。

ですから、本当の仏様を信じ、御本尊様に勤行や唱題をすれば必ず幸せになることができ、なやんだり困っていることも必ず解決します。

このことをお友達にお話することができるようになりましょう。