隠された財宝(令和元年11月)

むかし、インドのある地方に1人の長者がいました。
その人は大変年老いており、あまり寿命がありませんでした。
長者の奥さんは先に亡くなり家族はいませんでした。

 

その後、長者は再婚しその奥さんはとても若く美しい女性でした。
長者にはたくさんの財宝がありました。

やがて、待望の男の子がう産まれ、長者は財宝を引き継ぐ子供ができて、とても喜びました。

しかし、自分は子供が大きくならないうちにきっと死ぬだろう。そうしたら、妻は誰かと再婚するかもしれない。
あるいは、残した財宝を妻が全部使ってしまい、せっかく産まれたこの子に残せないかもしれない。

長者は、なんとかこの子に財産をすべて継がせてあげたいと思いました。
そして、息子に全財産をゆずるための名案を考えつきました。

 

長者は我が家の敷地にあるの森の中へ、信頼できる召使いのナンダを連れて行きました。

そして、1本の大きな木の下へ来ると長者は、「ナンダよ。お前を見込んで大事な頼みがある。聞いてくれるかい?」と言いました。

ナンダは誰よりも長者を信頼していましたから、「はい、御主人様。私にできることなら、なんでもいたします」と答えました。

すると長者は、
「実は私に待望の後継ぎの息子ができた。しかし、私はもう年だ。それで、後々息子が困らないように、財産をこの大木の根元にうめておこうと思う。

ついては、このことを誰にも内緒にして、息子が成人式を迎えたら伝えてほしい。また、妻にはこの森だけは人手に売らないように言ってほしい。

本当なら妻に全てをまかせたいのだが、妻はまだ若いし再婚するかもしれない。だから好きなように自由に生きてほしいと思っている。
ナンダ、分かってくれるかい?お前もそれまで死ぬんじゃないよ。どうか頼んだよ」
と、長者はナンダにあとのことを託しました。

 

ナンダは、こんなに自分は御主人様から信頼されていたんだと思うと、感激で胸がいっぱいになりました。
そして使命感がみなぎり、それからは生き生きと生活するようになりました。

やがて長者は亡くなりました。しかし美しい妻は、再婚の話があってもすべて断り、幼い息子を1人前にしようということを生きがいに、大切に息子を育てました。

 

そして、息子の成人式の日に妻は息子に、
「あの森の中に、お前が成人したら渡すようにと、家の財産をうめてあるそうです。場所はナンダおじいさんだけに遺言してあって、お前が成人するまでナンダおじいさんが見守ってきたそうです。

お前はこれから、おじいさんとあの森に行って父親の財産を掘り出し、その財産でお父さんが生きていた時のように、この家を繁栄させなさい」と言いました。

 

財宝

息子は、初めてこの話を聞いて、ビックリしてナンダの所へ行き、
「ナンダおじいさん、お父さんが僕のために財産をうめていたという話は本当ですか?」とたずねました。

するとナンダは、
「本当です。御主人様が成人式を迎える今日まで、私が財産を守ってきました。さぁ御案内しましょう」と答えました。

2人はスコップを持って、森の奥までやってきました。
ナンダは大きな木を何本も見て回り、1番大きな木の所にきた時一瞬立ち止まって、また歩き出しました。

そして、困った顔をして息子に、「御主人様、私はすっかり年を取ってどの木の根元だったか忘れてしまいました」と言いました。

息子は、「そうか。20年前のことだからね。木も大きくなって、様子も変わっているからね。無理もないでしょう。また明日こようよ」と言って、2人は手ぶらで家に帰りました。

ところが、次の日も、また次の日も、2人は森の中を歩き回りましたが、ナンダは1番大きな木のそばでひと休みしては、「忘れた。思い出せない」と繰り返すので、2人は手ぶらで帰ってきます。

息子は母親に、「ナンダおじいさん、本当に忘れてしまったのかなぁ?」と相談しました。
すると母親は「お父さんの親友だった村長さんに相談してごらん」と言いました。

村長さんは息子の話を聞いて、
「ナンダおじいさんは忘れてもいないし、君に隠してもいないよ。いつも必ず立ち止まる1番大きな木の根元を掘ってごらん。財産はきっとそこにあるはずだよ」と言いました。

息子はナンダを連れて、村長さんに言われた所を掘ると、確かに多くの財産がうまっていました。

ナンダおじいさんは、ばつが悪そうに息子と母親にあやまり、
「私は前の御主人様から、私1人に大事なことをまかされ本当に感激し、この財産の隠し場所を知っているのは自分1人だというので、御主人様が成人になられるのを楽しみにして、今日まで元気に長生きできました。

ところが、いざ御主人様とこの場所に来ると、今までの生きがい、張り合いがなくなっていくようで、なんだか寂しくなって、どうしても口から言葉が出てこなかったのです。申しわけございませんでした」
と言って涙を流し、もうここにはいられないからと、自分の荷物をまとめて出て行こうとしました。

 

息子は、ナンダの手を取って、
「ナンダおじいさんは、財産を20年間無事に守ってくれました。決して隠したり使ったりしなかった。

成人したあの日も、初めからあの木の根元を教えてくれたんだ。僕がそれに気づかなかっただけです。
これからもずっと家族として仲良く暮らして行こう」と励まし抱きしめました。

こうして、長者の家は3人の心の信頼という宝と恵まれた財産によって、後々まで繁栄していきました。

皆さんは、今日の話でどんなことを学び、何が大事だと思いましたか?それは、

「①ナンダが主人との約束を守り、その使命を果たしたこと。
②ナンダのわがままな心を聞いても、その本心を知って息子が許したこと。
③主人とナンダの信頼関係、そして結果として息子、母親、ナンダの3人の信頼関係が築けたこと。」

といったことが挙げられますが、すべてが大事なことです。

皆さんは、本当に信頼できる友達はいますか?そして、私たちにとって何が1番大事であるか、宝であるか、そして信頼でき決して裏切らないものであるか、わかりますか?

友人との揺るぎない信頼を築くことはとても大切なことです。
そうした友人を築くことも大事なことです。

しかし、最も大切なことは、御本尊様を信頼しすべての物事を御本尊様に委ね、御題目を唱え祈っていくことです。

そして、自分自身が努力するのは当然ですが、色々なことを御本尊様に祈り、かなえることができるように頑張りましょう。