雨を降らした龍 (平成29年4月)
むかし、日本の奈良というところに竜苑寺(りゅうえんじ)というお寺があり、そこに一人の僧侶が住んでいました。
その僧侶は長年にわたり、お釈迦様が説かれた法華経(ほけきょう)を読み人々に講義し、又一緒に法華経を読むことを毎日の勤めとしていました。
さて、講義を聴聞している人々の中に一匹の竜がいました。
その竜は人の姿に身を変えて、毎日そのお寺に通って僧侶のする法華経の講義を聞いていました。
ある日、僧侶はあまりにも熱心なその人に
「あなたは毎日このお寺へ来て、私の講義を聞いていらっしゃいますが、どこからおいでなのですか?また毎日通っているのは何か理由がおありですか?」と聞きました。
すると竜は
「自分の本当の姿は竜です。御僧侶様の唱える法華経の御経と、それをいつもわかりやすくお話される御講義を心から尊く思い、自分が畜生の身となってしまった罪障消滅(ざいしょうしょうめつ)のためにも、こうして毎日通わせていただいております。」と答えました。
僧侶は、この人が本当は竜であり、清らかな尊い信仰の姿を知り、その竜の罪障消滅と成仏を心から祈念し、竜もその僧侶を心から敬い一生懸命信仰に励み、成仏したいと願いました。
そしてこのことは世間にも噂として広まりました。
丁度その頃国内では少しの雨も降らず、穀物(こくもつ)が育たず人々は飢え死にしそうになっていました。
ある人が天皇に、
「奈良に竜苑寺というお寺があります。そこの僧侶は長年竜と親しくしています。
その僧侶を通して、竜に雨を降らすように命令をされれば、きっとこの国は救われると思います。」と申し出ました。
それを聞いた天皇は早速、竜苑寺の僧侶を呼び寄せ、
「竜に雨を降らせるようにたのみなさい。もし従わなかったら国外に追放する」と命令しました。
僧侶は竜を呼んで天皇からの命令を説明しました。
竜は日頃から、なんとか僧侶の役に立ちたいと思っていました。そして、
「私は長年御僧侶に法華経を教えを聞かせて頂き、その功徳によっ過去世の悪業(あくごう)による苦しみから救われ、安楽の境界に至ることができました。
だからどんなことでも、御僧侶の言われることは聞いてご恩に報いたいと思っています。
しかし、雨を降らすのは大梵天王(だいぼんてんのう)の権限で私が勝手に雨を降らすことはできません。
もし勝手に雨を降らしたら、私は必ず首を切られてしまいます。そして死後は地獄に落ちると言われています。
でも、私は殺されても御僧侶のお役に立てればうれしく思いますので、なんとか3日間だけ雨を降らせます。」
と言い、
「一つだけお願いがあります。私の死骸を探して死骸のあったところにお寺を建て、是非法華経を以て供養して頂きたいと思います。そうすれば私は地獄に落ちなくてもすみます。」とお願いしました。
僧侶は竜の遺言を聞いて泣きました。
そして竜の覚悟を天皇にも伝え、天皇も竜の誠意に感謝し雨が降るのを待ちました。
やがて竜の言った通り3日間大雨が降り、枯れていた作物も元気になり、国中の人々は飢えから救われ、天皇も人々も竜に感謝し喜びました。
僧侶はすぐに竜の死骸を探し、ずたずたに切られた竜の死骸が四ヶ所に散らばっているのを見つけました。
僧侶と天皇はその四ヶ所にお寺を建てることにし、国中の人々もお手伝いをしました。
それから僧侶は一生その4つのお寺を回り、法華経を読み竜の回向を続けていきました。
竜は法華経の尊さを心から感じ、その講義をしてもらった御僧侶のご恩に報いる為、国中の人々を救う為に、大切な自分の命を犠牲にして雨を降らしました。
日蓮大聖人様も「命のあるかぎり南無妙法蓮華経と唱えていけば必ず幸せになります」と仰せです。
皆さんも、命あるかぎり一生懸命御本尊様に南無妙法蓮華経と唱へていけば、必ず幸せになり、すばらしい人生を送ることができます。
これからも毎日しっかり朝晩の勤行をし、一生懸命勉強して立派な大人になれるように頑張って下さい。